第19章 別れ
涙が止まらなかった。止めることができなかった。
『僕らもし死んでも会えますか』
『私は今生に未練がありませんので、きっと生まれ変わらないと思いますよ』
『僕は会いたくなると思います』
『生まれ変わるなら全て忘れて新しい人生を歩きたいものです』
『それでも、僕は会いに行くと思います』
いつだったか、はるか昔に交わした言葉がありありと思い出すことができた。
『師範。俺の言った通りでしょう。ちゃんと会いに来ましたよ。』
『はい…そうですね…』
私は思い出した。
継子を。
その声を。
その顔を。
その姿を。
その名前を。
『無一郎くん』
彼と過ごした時はたったの二ヶ月でした。
けれど、その二ヶ月は。
君と過ごしたその二ヶ月は、かけがえのない時間でした。
『俺…記憶が安定していなかったから、しばらくして師範のことも忘れてしまったんです。』
『えぇ…。』
『でも…生きているときに記憶を思い出すことができたんです。』
継子が無邪気に笑う。
あぁ、そうなの。そうやってあなたは笑うのですね。
『師範、また…俺の手を繋いで、一緒に歩いてくれますか?』
『良いですよ。散歩をしましょう。』
私は彼の手を取った。
……手が大きい。
思えば、私の記憶にある彼よりもずっと逞しくなっていました。
『……大きく…なりましたね…。』
『はい。師範から一本はとれるようになったと思います。』
『いいえ…君は、ずっと前から私を越えていましたよ。』
『そんな、師範は鬼殺隊で一番強かったんですよ。』
『無一郎くんは私より強くなりましたよ。さぁ、行きましょう。』
無一郎くんの手を取り、私は歩いた。
歩幅も大きい。
あぁ、もうあの小さな歩幅に合わせる必要はないのですね。
私はその成長が嬉しくて、彼にそっと微笑んだ。