第19章 別れ
泣きはらした顔の私たちは廊下のすみにしゃがみこんで、涙が乾くのを待っていました。
「…会いたい人がいるのです、アマモリくん。」
そんななか、私は切り出しました。
「……会いたい人?」
「その人は、卒業して…もう会えなくなるのだと現世の私が教えてくれました。」
「何て人や?」
アマモリくんが真剣な顔で聞いてくれた。
「悲鳴嶼行冥という人です。」
「…前世でめっちゃ聞いたことのある名前やけど……現世では知らんなぁ。…でも、この学園にいて今日卒業するんやろ…卒業式はもう終わってるし、多分教室におるんちゃうかな……。クラスわかる?どんな人?」
クラス…?新しい日本語ですかね。
「クラス、というものはわかりませんが…体が大きくて、盲目の男の人です。」
「いや、男っちゅうんはわかっとるよ…。はぁ、そうか。盲目。ほんなら特別学級科やな。中等部も高等部も同じ教室やから…。」
「わかるのですか!?」
「うん。あんな、キメツ学園…ここの学校には、普通科と特別学級科ってのがあってな。盲目とか、普通に生活を送るのが困難な人は特別学級科にいるんよ。」
説明してくれたが私にはよくわかりませんでした。
しかし、場所がわかるのは本当のようです。
「連れていって下さい、アマモリくん!」
「ええけど…絶対やないで!」
「構いません!」
私は勢いよく立ち上がった。
「……何で、そんなにその人に会いたいん?」
「……私が…」
ぎゅっと拳を握りしめる。
「私として、現世で生きるためです。」
「……キリキリちゃん…?」
「私は前世の私を必ず連れ戻します。そのためには、私が消えなくてはならない。未練を絶たねばならないのです。そうしなければ、現世の私は私を許さないでしょう。」
アマモリくんはよくわかっていないようでした。
現世の私は、消えることを望んでいた私が持っていたわずかな消えたくないという気持ちをわかっていたんです。
だから、私と入れ替わったんでしょう。
それがわかるんです。だって、現世の私だって、私だから……。