第19章 別れ
「……刀…あの…」
着ていた服も違う。お面もしていない。でも間違いなくアマモリくんだった。
「刀…」
アマモリくんはハッとした。
「……俺のこと、思い出したん?」
「…まさか……ここが現世だとでも言うのですか…!?」
私は驚きました。
本当に、入れ替わってしまったのでしょうか。
「キリキリちゃん、落ち着いて。……どうしてしまったんよ…?」
「わ、私、このままじゃ、こっちの私が消えてしまいます…!!」
「…ッ、あかんよ、パニックにならんとって。落ち着くんや。呼吸して。」
パニック?パニックってどういう意味だろう。知らない言葉。
あぁ、落ち着かなくては。落ち着かなくては。
「こ、胡蝶さんか…不死川か…ええと、どこにおったんかな。ちょお、キリキリちゃん、歩ける?」
「は、はい。」
私は落とした風車を拾い上げながらわけもわからずアマモリくんについていった。
「キリキリちゃん…その、今自分で自分がどういう状況かはわかってるん?」
「…わかっています…信じられないのですが……」
「…そうなんか……えっと、説明できる…?」
私は戸惑う頭を整えるためにも口にした。
「私…私は、記憶なんです。霧雨の前世の記憶…。」
「……キリキリちゃんが前世の記憶が思い出されへんかった言うんは聞いてたけど…」
「…私は…二つに別れていたんです。私は、前世の私。あの私は、現世の私。」
「じゃあ…今のキリキリちゃんは、前世のキリキリちゃんなん…?」
「…そう、なります。信じられません、よね。」
アマモリくんは首を横に振る。
「信じるよ。信じひんと、説明つかんやろ。」
「…ありがとう、ございます……。」
私は少し落ち着いてきた。口に出したのがよかったのでしょうか…。
「……なぁ、キリキリちゃん。」
「はい?」
アマモリくんは、カラカラと回る風車を手に言いました。
「…キリキリちゃんから……連絡なくなって、死んでもうたんやって……俺ら、公式な契約とかなかったから…誰からも正式な知らせがなくて…そしたら……俺が打った刀、……不死川が持ってきよってなぁ……遺言で、刀返しに来たって…」
だんだん涙声になってくる。私も泣きそうだった。