第19章 別れ
「…だから、今日消えるの…?前世でも…今日に死んだから?」
向こう側の私が泣きながら頷いた。
『行冥……ッ…!』
とうとう泣き崩れてしまった。
私は見ているだけだった。
ちっぽけだ。何て私はちっぽけなんだろう。
向こう側の私を包み込むように、炎が燃え盛っていた。
「……悲鳴嶼先輩……卒業しちゃうの…会えなくなるかもしれないよ…」
『…でも……私、そっちに行けない、もう遅いのです…!』
向こう側の私は両手で顔をおおって泣いている。炎がすぐ側まで来ていた。
私は手を伸ばした。ガラスを思いっきり叩いた。でも、割ることなんてできない。
「…許さない、そんなの、絶対許さないんだからっ!!!!!」
痛い。叩きすぎて手が痛い。でも割れない。
どうしたら、どうしたらいいの……!!!
まだ、できること、あるんじゃない?
ダメ。私、頑張って。あんなに辛いのに、前世は笑って頑張って生きたじゃない。最後の最後までよくやったんだ。今もできる。
「霞の呼吸…」
そうだ。いつも、刀一本で、闘ってきた。
…何だか本当に刀を持っている気分だった。
「壱ノ型」
いつも、この型で。基礎となるこの型で。何でも貫いてきた、突破口を作ってきた。始まりの型。一番はやくに覚えた型。誰も教えてくれなかったけど、独学だったけど。
胸を張れ、私。
私は誇り高き鬼殺隊の霞柱。
我が剣は決して折れない、不屈の刀。
人の道は誤っても、太刀筋だけは正確に。
強く、ただひたすらに強く…!!!
「垂天遠霞ッ!!!!!」
バリンっ!!!!!と音がした。
ガラスが砕け散る。
私が顔をあげる。
私は私の手を取る。
「……」
「……」
交わす言葉も出てこなかった。
私は私を思いっきり反対方向に…つまり、先程まで私がいた方へ投げた。一方で、私は炎に飛び込んだ。
その後、ガラスが再生した。
私は炎に包まれた。
ガラスの向こうに私が見えた。
何かを叫んでいた。
けれど、聞こえることはなかった。