第16章 餓鬼
「…覚えて、ないの?」
カナエが青ざめる。
妹の顔も険しい。
「…?ごめん、紹介してもらったっけ。」
「……前世でね…。」
それを聞き、自分の顔が強ばるのがわかった
「…私の、三つ下の妹だった、でも今は七つ離れているの。…だからわからないの?しのぶよ、私の妹の…。」
「しのぶ…」
「胡蝶しのぶ。ねぇ、嘘よね?」
カナエが肩を揺らす。
わからない。何を言われてもわからない。
「ごめん、わからない。しのぶちゃんは私を知ってるの?」
「あなたどころか、全ての記憶があります。」
「……そっか。」
羨ましいな。素直にそう思った。
「私に、何か言いたいことがあったのかな。」
「……覚えていらっしゃらないのなら、意味がありません…」
しのぶちゃんはそう言った。
「…しのぶがに伝えたいことがあるって言ったの。ごんなさい。無理に思い出させようとするつもりはないの。」
「……カナエ…」
「しのぶ、覚えてないなら仕方ないわ。ね?」
しのぶちゃんは少し納得できないようだった。それどころか…泣きそうになっていた。目がうるうるしてる。やばい。
「ご、ごごめんね!?お姉ちゃん、覚えてなくて、えっとー…!!お姉ちゃん、昔のお姉ちゃんに怒っとくから!何で忘れたんだーって!」
「…気を遣わなくてけっこうです、ぐす、私、生前のあなたを、知ってるんですから」
「え、あ、そうですか」
私は慌ててい直した。
…しっかりした幼女だなぁ。って思うけど、生前は大人だったんだよね!?その記憶があればそうだろうなぁ…。
「…あの…一つ良いかしら?」
「なに?」
「過去の私…って、どういうこと?」
カナエが聞いてきた。
「……あー、それ…。咄嗟に出た、嘘というか。」
「…本当?」
「……」
だめだ。私、カナエの綺麗な顔の迫力に弱いんだよなぁ…。