第16章 餓鬼
私は全てを姉妹に話した。
それを聞いたあと、やっぱり信じられないみたいだった。
「じゃあ、記憶に穴があるのは…その、前世のが邪魔してるってこと?」
「うん。…前世の私は、私を嫌っていたの。だから…。前世のことを捨てて欲しいんだと思う。」
「でも、それっておかしくありませんか?」
泣いて赤くなった目のまましのぶちゃんが言った。
「前世の記憶、全くないわけではないんですよね?」
「そうなんだけど…。多分、覚えてるの幸せな記憶だけなんだ。」
「……なるほど。」
納得してくれたようだ。
でも、言ってる本人の私が納得できない。幸せな記憶が残っているならなぜ。
なぜ、継子のことが思い出せないの?あんなにも大切だった、私の継子…。
「……じゃあ、伝えてほしいことがあるから、お願いできますか。」
「…何?」
「…約束、破ってごめんなさいって……」
しのぶちゃんが言う。
私は当然何のことかわからない。けれど、とても切ない気持ちになった。
「わかった、伝えるね。だから泣かないで。」
「う、ひ、っく」
しのぶちゃんが涙を流す。こんなに小さいのに前世のこと全部抱えてるんだ。
私も頑張らなきゃ。
絶対、全部取り戻す。
「じゃあ勉強しよっか!」
「えぇ~!?」
「何言ってるの、国語なら教えてあげるから!」
その後、ちゃんと勉強をしてから帰宅した。
「今日は面白い映画だったの?」
昨日のこともあってか帰宅早々おばあちゃんはそう聞いてきた。その質問に、私はとにかく頷いておいた。
その晩、私は夢を見た。
見たことは確かなのに、内容はいつものごとく覚えていないのだった。