第16章 餓鬼
放課後、部活もないのですぐに帰った。
おばあちゃんに挨拶し、自分の部屋に行く。
「おばあちゃん、友達と勉強会してくる。」
「わかったよ。」
友達と行っても実弥で、向かう場所は隣なんだが。
インターホンを押すと実弥はすぐ出てきた。
「ん。」
それだけ言って中に入る。
「お邪魔しまーす。」
お願いしておいてその態度はなんだと言いたいが、黙っとこう。怒られそう。
今日は実弥しかいないらしい。おじさんは仕事が遅くて、おばさんと玄弥くんはママ友さんのところらしい。
「散らかってっけど」
確かに散らかっていた。…物が多いな。バンドのCDにトロンボーンの楽譜とか、雑誌とかが散らばっていた。
あの時はじっくり見る余裕なかったもんなぁ。こうなってたんだ。
「んだよ、ジロジロ見て。汚くはねえだろ。」
「…いや…私の部屋、本棚とベッドと机しかないから色んな物があってすごいなって思って。」
「…お前の部屋は殺風景すぎだろ……。」
「え?」
そう言われてドキッとした。も、もっと物置いた方がいいの?でも置くものなんてない…。
実弥は軽くため息をついて、鞄から教科書を取り出した。
「まぁとりあえず、英語教えてくれ。」
「お任せあれ。」
今日の目的を果たすため、私はシャーペンを握った。
実弥がどれくらいわかっていなかったかというと、……わりと重症だった。
「お前すげえなぁ。塾も行ってないのによくわかるなぁ。」
「……まあね。」
私は笑った。
「…どうした?」
「何が?」
「いや…お前、何か…。」
「英語は終わり?次は数学教えてくれるかな。」
実弥に悟られまいとはぐらかす。
……実は、前世で英語習ってたんだよなぁ。
使うことなかったし喋らなかったけど、ペラペラだった。
これ知ったら、どんな顔するんだろうか。