第16章 餓鬼
その日の夜ご飯でおばあちゃんが言った。
「物置部屋の電気つけると、実弥くんが飛び出てくるのよ。ちょっと申し訳ないもんだから、雨戸を閉めたの。言っといてくれるかしら。」
「…うん。」
おばあちゃんの言葉に、少し胸が痛んだ。確かに申し訳ない。…私があんなことになったから、多分気にかけてくれてたんだろう。
「そういえば、おばあちゃん達もう友達のところに行かなくて良いの?」
私が何気なく聞くと、食いつき気味におじいちゃんが答えた。
「気にしなくていいよ」
有無を言わさぬ物言いに何も言えなかった。
とりあえず実弥に連絡した。
すると、了解と返ってきた。そしてそのあとに、
『なぁ、英語おしえてくんね?』
そうきた。珍しい。
『いいよー。英語得意。』
『ん。明日頼むわ。俺の部屋。』
………はい?
ちょっと待て。あんた、滅多にそんなことしないじゃない。私が最後に入ったの…あの事件以来ですけど。
まじか。まじなのか。
まあ外でくっついてたら見つかるし…。うん、妥当。何もない。何もないから…。
『じゃあ数学教えて。』
『わかった。』
にやつくのがわかった。
おじいちゃん達に悟られないうちに、さっさと自分の部屋に戻った。