第16章 餓鬼
そんな私の苦悩を嘲笑うように、学校の一大イベントがやってきた。
そう、試験。これさえ終われば冬休みになるのに。私達学生はいつものごとく悩まされる。
「霧雨は頭良いから大丈夫だろう。何をそんなに不安になっている。」
「休んでたところがちょっと不安…独学だから。」
「明日から部活は休みだ。頑張れ。」
伊黒くんに励まされ、何とか笑った。宇随先輩はというと、教室の隅で黙々と絵を描いている。
「…霧雨が来たら騒がしくなるかと思ったが」
「……先輩も試験ヤバイのかな」
何やら様子がおかしい。
その顔は、どこか思い詰めたような…。
「なあお前ら」
突然先輩が私達に話しかけてきた。
「……クリスマスプレゼントって何渡すべきだと思う。」
「「………」」
私達は悟った。
女絡みか…。
期末テストが終わって冬休みになるともうクリスマスだし。
「お菓子とか」
「本とか」
「かー、お前らほんっとガキだなー。」
何を言っても納得しないことはわかっていたので私達はノーダメージ。
「何も思い付かねえ。試験とかまじどーでもいーわ。」
「霧雨もあれくらい気楽になったらどうだ。」
「さすがにちょっと…。」
「おいてめえら。」
宇随先輩がキッと睨んでくる。私達は顔を見合わせて吹き出した。
「そんなに必死に悩むとはさぞ良い彼女なんでしょうけど。」
「先輩乙女~!」
「……まぁ否定しねぇ。」
私達は先輩を冷やかすに冷やかした。悩んだ様子の先輩も何だか明るい顔つきになった。
「さんきゅーな。」
そう笑ってくれた。
けれど、どこか…。
どこか、寂しい気配がする。