第16章 餓鬼
「霧雨っ!!」
私は先生にゆすられて目を覚ました。
ハッとして慌てて体を起こす。
「この問題の答えは?」
「…へびが……」
「蛇?何寝ぼけてるんだ?」
クラスの皆が爆笑する。
あ、あれ?私、何か…蛇を見た気がする。夢だった??
「今は数学だぞ」
「あ、あー、えっと…」
眠る前に解いた答えを言うと、先生は悔しそうに正解と言った。また皆に笑われた。
……恥ずかしい!!!
授業が終わると友達にからかわれた。また恥ずかしくてたまらない。
「何で蛇なんて言ったの?」
「夢の中にいた…」
「授業中に夢って、面白すぎじゃない?」
皆がクスクス笑う。
「あー!もう寝ない!授業中は寝なーい!」
「いやいや、そんなこといってこの子も実は寝てたんだよ?皆が爆笑したから起きたんだよね!」
「ちょ、言わないでよー!」
こういう会話をしていると、学校って楽しいなと思う。冨岡くんと話したし、もうわだかまりはない。
けど。
どうして。
どうして、私は鬼になってしまったんだろう。
鬼になっても鬼殺隊で居続けた理由は…?
そもそも不思議なのは皆が私が鬼になっていたことを知らないこと。お館様は死後に私の話をされたという。ならば、なぜそのときにお話にならなかったのか。
冨岡くんは他言していないと教えてくれた。
だから、誰も知らない。
それがおかしいのだ。
それに、私は鬼になった経緯と、鬼になってからの記憶がない。
不穏だ。
知ってはいけない。
そんな気がするんだ。