第3章 青春
「トランペットー、新入部員だぞ」
私は縮こまりながら先輩の横に立っていた。中には五人ほどいた。
「マジ!?やったー!?」
「ありがとう宇随!」
「おいおい、新入生囲んでビビらすなよ~。」
宇随先輩はそれだけ言って去っていった。自分の練習場所に行ったのだろう。彼はサックスパートなのでそこに行ったのだろう。
トランペットの先輩方は優しく迎えてくれた。
楽器のかまえ方、マウスピースの吹き方…丁寧に教えてくれた。一時間つきっきりで教えてもらった結果。
『ぷわあぁあ~』
と腑抜けた音が出た。それでも先輩たちは喜んでくれた。
「何回でもきていいからね!仮入部だけでもぜひ!」
そう言ってくれた。私は先輩たちより先に帰った。
一応教室には寄ったが実弥たちはいなかった。
帰ったんだろうな。黙って行ったの申し訳なかったけど、謝ればいいか。
下駄箱に行くと、鞄を持った実弥と冨岡くんがいた。
「おせぇ!!」
「ごめんっ!あ、あの…部活勧誘受けて、断れなくて…」
私が言うと、冨岡くんが頷きながら言った。
「頼みごとを断れないのは相変わらずか」
恐らく前世のことを言っているのだろう。実弥が青筋を立てる。
「おい!!」
「実弥、怒らなくてもいいよ。冨岡くん、前世と今世の記憶は今みたいに混ざらないようにね。」
私は声を潜めて忠告した。
冨岡くんはわかったと納得してくれた。
彼とは帰り道が違ったので実弥と並んで帰った。
「部活は何見たんだぁ?」
「吹奏楽部と美術部。勧誘してくれた先輩が掛け持ちしてたの。どっちも楽しそうだし…。私も掛け持ちしようかなぁ。仮入部して決める。」
「ふぅん…。」
「実弥は?」
「何も決めてねぇ。…だが吹奏楽は興味あるかもなぁ。」
実弥は他人事のようにぼやいた。
部活には興味無さそうだったからなぁ。
何部に入るんだろうか。