第15章 朦朧
「お邪魔します」
「いらっしゃい!」
おばさんが出迎えてくれた。…おばさんって言うのがためらわれるくらい若いんだよなぁ。
「あの、手伝います。」
「あぁ、いいのよ~。」
「そういうわけには…。」
「あ、そうだ!玄弥と遊んでいてくれる?」
背中を押されて台所からリビングに戻った。
私はちょこんと部屋の隅に座り込んで静かに遊ぶ玄弥くんと向き合った。…これは手伝いと言うのだろうか。
「玄弥くん、こんにちは」
「…ねえちゃん」
ふにゃあ、と笑う。
はい可愛い。最高に可愛い。
「何して遊んでるの?」
「これ」
玄弥くんが差し出したのはブロックだった。
「へぇ、これで何作ってたの?」
「くるま」
そう言い彼が渡してきたのは…。
(クオリティたっかっ!?)
もろに車だった。車としか言いようがなかった。え?これプロレベルじゃない?完璧じゃない???
「す、っごい上手…」
「ねえちゃんも作ろ?」
「うん」
無理無理無理こんな綺麗に作れんよ!?
し、しかし…これでは年上の威厳がっ!!!
思いだせ私、車なんて毎日目にしてるんだから…ッ!!!
と、作ったはいいものの。
見えるよ?車だよ?ちゃんとね?けどさ。
玄弥くんのが上手なんだよなああぁぁぁ。
「ねえちゃんのくるまかわいい」
「ありがとー」
玄弥くんは喜んでいたので…まぁオッケーでしょ。
「げんや、もっとできる」
「そうなの?何作るの?」
思えばブロックなんて遊んだことないや。玄弥くんが黙々と作る隣で私も黙々と製作した。
「きょーりゅー」
「箱」
しかし、想像力が欠落していたため何も思い浮かばず、出来上がったのは玄弥くんの顔くらいあるばかに大きな立方体だった。