第15章 朦朧
帰り道をふらふら歩く。何回か実弥に支えてもらわなければ立つことも困難になった。けれど私は歩いた。
「おい、休憩した方がいいんじゃねえか」
「……ううん、はやく帰りたい」
何だろう。すごく気持ち悪い。
「私、やっぱり思い出せないことがあるんだわ。それがむしゃくしゃするの。不思議…。」
「……なぁ」
「何?」
「お前、冨岡となんかあったのか」
そこで家の前だった。
お互い、すぐそこに家があるのに。
固まってしまった。
「……ちょっとね…」
「ちょっとって何だ」
「ごめん、言えない」
「………」
実弥が睨んでくる。
私は怯みはしなかった。
「実弥、ちゃん」
ピリピリした空気を壊したのは家から出てきた実弥のお母さんだった。見た目が怖い実弥と違って、小柄の可愛い人で、授業参観に現れたら驚かれるお母さんNo.1をかっさらっていた。
実弥はその姿を見て無言で私に背を向けた。
「こんにちは」
私もそれだけ言って背を向けようとした、が。
「ちゃん、今日天ぷらなの。食べていかない?」
「…えーっと……」
今の気まずい雰囲気では、はいと言いにくい。
「さっきね、おばあちゃんから連絡があったの。二人のご友人の方が倒れたんですって。危ないかもしれないから、見に行くってことで…。スマホに連絡は入れたってあるから、見ればわかると思うわ。」
「…そうなんですか」
「そう。晩ごはんお願いしますって言われてるから、遠慮は良いのよ。お野菜たくさんいただいたんだから。」
おばさんはにこにこ笑っている。
実弥は私の返事を聞かずに家の中に入ってしまった。
「じゃあ、お願いします。おばあちゃん達に電話してから行きますね。」
「はぁい。待ってるね。」
私は家の中に入った。スマホには確かに連絡があった。
電話を掛けたけどでなかったので留守電を入れた。
「おばあちゃん、おじいちゃん。元々家事はやってたし、家のことは大丈夫だから、友達を一番にしてね。」
あとは荷物をちょっと片付けて、すぐに隣の不死川家に向かった。