第12章 かすがい
『明日は来れそう?』
担任の言葉に、上手く答えられなかった。
「わかりません。」
『教室に来るのが難しかったら、保健室でもいいの。頑張るのが辛かったら先生に相談してね。』
「……はい。」
おばあちゃん、多分両親とのこと先生に話しなたな。
別にそれに関して何かを言うことはないけれど。
そこで担任との電話は終わった。
家にいると電話だのお見舞いだのがわずらわしい。何だか家にいるのが嫌になってきた。
「おばあちゃん、おじいちゃん。私、身体動かしてくる。」
二人とも電話の内容を聞くことなく、快く送り出してくれた。
ショートパンツにTシャツ、スニーカー。スマホだけをポケットにつっこんで外に出る。
河川敷あたりを歩こう。
久々にこんなに歩くなぁ。と思っていたら、河川敷につく頃には軽く息切れしていた。情けない…。
川の近くにおりて少し腰をおろす。川で遊ぶ小学生くらいの男の子が見えた。
「楽しそうだなァ」
「本当だね……ッ…!」
やば。
ボーッとしてて気づかなかった。
「よォ」
「………」
振り向けない。ヤバいヤバい。
あー、そっかあ。部活の帰りかあ…。
あの話し合いのときに一言も話さなかったし、隣に住みながらお見舞いも来なかったこの男。私はそれで安心していたのだが。
だが実弥はかまわず隣に座ってきた。
「…話したくねぇなら、話さねぇでいいよ。」
違う。話したくないわけじゃない。
「ただ、皆お前を理解したかっただけだ。だが配慮がなかった…それに」
実弥の発言に、私は。
「……私」
気がついたら口を挟んでいた。
「死ぬんだから、真相に辿り着かなくてもいいと思ったんです。」
「…?」
「もう死んだんですから、確かめようもありません。」
私はにっこり笑った。
「冨岡くんの質問にはハッキリとした答えは出せない。今はそれだけを言っておきます。」