第12章 かすがい
河川敷に吹く風はとても気持ちいい。
「私は鬼との戦闘の末に死にました。ですが、その鬼との戦闘前に致命傷を腹部に受けていました。刃物だったことは確かです。」
わかる。どこかもわかる。
「呼吸で止血もできませんでしたので、間違いなく致命傷でした。」
「…っ、それは…やっぱり鬼殺隊なんじゃねえか!?」
「さぁ?それがわからないのです。夜でしたし。不意でしたから。」
私は目を閉じた。
「わからないまま、死んだのです。」
目を閉じると風を感じられていい。
「…嘘つけェ。あんたがわかんねぇなんてないだろうが霧雨さんよォ…気配に人一倍敏感だったあんたが奇襲にあうだぁ?俺は信じられないね。」
しかし、実弥に邪魔された。
「そーなの!わけわかんないよねぇ?」
私はどかっと乱暴に腰を落とした。
「この一週間、みっちり考えたわ。でもわかんない。だから深く考えないことにしたの。」
「……。」
「でもそれじゃあ、皆…納得しないよね。」
何となくキニナッテ、足元の石をツンツンつついた。あ、ダンゴムシがいた。なんて。そんなことを考える余裕が出てきた。
「………はっきり言って聞きてえことは山ほどある。でもまぁ、話したくねぇならそれでいいし。やりたいようにやれよ。」
「……知りたい?」
ダンゴムシを見失った。でもこんな場所、いくらでもいるだろうなぁ。
「実弥は知りたい?」
私は顔を見ずに聞いた。
「知りたくねぇよ。お前の死に際は立派だったぜ。」
「ボロボロに泣いたのに?」
「あぁ?覚えてねぇな。」
優しい。
実弥は優しい。あの時一言も発さなかったのも、君なりの優しさで。
本当は知りたいくせに、知りたくないなんて嘘をつく。
でもそうさせたのは、私のせいなんだね。