第12章 かすがい
カナエが言うには、こうだ。
「あなた、何か大切なことを隠していたんじゃないかしら。」
「……隠す…?」
私はカナエの発言の意味がわからなかった。
「霧雨さんの遺体は悲惨なもんだった。両足と左手の欠損。だがそれ以上に気になったのはな。」
自分の死体の話は気味が悪い。
…まだ思い出せる。生々しいくらいに。
死の間際。
「どういうわけかあんたの死体と遺品は刀を除いて全て盗まれた。本部への運搬途中にだ。」
私は心臓を握りつぶされる気分だった。
死ねば終わり。そんな優しい世界ならば良かったのに。
来世が来たからって、嬉しいことでもない。
「、あなた少し様子がおかしな時があったわ。会議にいなかったり、お館様に無断で他の担当地区に行ったり。何をしているのか聞いても答えてくれなかったでしょう?」
「……別に、私は…」
悲鳴嶼くんが発言する。
「霧雨の遺書…内容までことこまやかに私は覚えている。お前の遺書は異様だった。」
「……」
「お前は死期を悟ったように突然遺書を書いた。…遺書は霧雨の死ぬ数日前にお館様に届けられたと聞いた。」
私はいてもたってもいられなくて立ち上がった。
「帰ります」
「まあ待て。座れ。」
宇随くんが促す。
私は立ったままだった。
私はどうしたらいいのかわからなかった。戸惑って、黙り込んでしまった。