第6章 美しい悲劇
「じゃーん、可愛いでしょ?」
清光の持ってきてくれた包みを開くと、淡い色合いの浴衣が出てきた。
清光も浴衣に着替えてきている。
「俺と並んで合うのにしたんだ」
「ありがと」
「着てみよ?」
「うん」
私は着付けられないから、清光に言われるまま服を脱いで浴衣に袖を通した。
それを清光が慣れた手つきで着付けてくれる。
「…似合う、かな」
「うん。だって俺の見立てだもん」
目の前の清光は嬉しそうだ。
「ねぇ主?」
「なぁに?」
返事をした私の唇に清光のそれが甘く重なる。
「キス、久しぶりだね」
「そう、だね」
「なんか、タイミング逃しちゃって…照れくさいや」
言いながら笑う清光はやはりとても可愛いかった。
「ご飯食べに行こう?」
「だね」
私もなんだか照れくさくなってしまって、その言葉に同調するしかできなかった。
清光と広間に向かうと、もう既に夕食の準備は整っていて男士が全員揃っていたけど、誰ひとり箸を持っていなかった。
「主やっときたー」
「オレもう腹ペコ!大将早く座ってくれよ」
短刀くんたちに急かされ私用だと空けられている席につくと、
「今日は主の本丸初宿泊だ。朝まで主と共にいられることを皆で祝おうと思う。乾杯!」
長谷部が仕切り、皆が乾杯と返した。
「主、どうしたんだ?その浴衣は」
私の席は三条の間で、隣には三日月がいた。そして向かいには小狐丸と石切丸。
「清光に…」
「そうか。悪くないぞ」
誉められて頬に熱が集まる。
「頭痛は落ち着いたか?」
「はい。おかげさまで」
食事をしながら三日月と話していると、
「ぬしさま、申し訳ありませんでした」
正面の小狐丸が急に頭を下げた。
「私が調子に乗りすぎた故、ぬしさまに苦痛を…」
しゅんとすると頭の上の飛び出ている毛も少し垂れてしまう。
「大丈夫だって!そんな凹まないで!!」
慌てて取り繕いつつも、
「あ、でも私小狐丸の肉体美見損ねたから、見せてくれたら許す」
思い出して言うと、
「主、何とんでもねぇこと言ってんだ?」
後ろにいた和泉守に聞こえたらしく咎められた。
「私は構いませんよ。ぬしさまがそれで許してくれるのでしたらいくらでも」
小狐丸は自信に満ちた表情でいう。
「あんたは男脱がして鑑賞する趣味でもあんのか?」