第6章 美しい悲劇
なんだかもうのぼせそうだ。
そろそろ私は出たいけど、みんなはまだ入ったばかりだし、タオル持ってこなかったからどうしたもんかと悩んでいると、
「使え」
山姥切がぶっきらぼうに頭のタオルを私に向かってつきだしてきた。
「顔が赤い。もう上がって水を飲んだほうがいい」
「ありがと…てか山姥切さんめちゃくちゃ綺麗じゃないですか!?隠してるのもったいないです!」
受け取りながらも姿を見せた美男子に目が釘付けになってしまう。ちゃんと見せてもらったことがなかったからびっくりしてしまった。
「…綺麗とかはいい。早く出ろ」
目線を反らしながら言うから、有り難くそのタオルを使わせてもらった。
脱衣所まで戻り身体を拭き、服を着ていると、
「主、大丈夫なの?」
光忠が追いかけてきて後ろから抱きしめてきた。
「ちょっと、濡れちゃうじゃん!」
「夏場だからすぐ乾くよ。それより僕は主の身体が心配。長時間いるために無理してるんじゃないの?」
「無理は、してないよ?今日に限っては純粋に泊まれるだけの時間があるわけだし」
「そう?僕に秘密にしていること、ない?」
ぎゅうっと抱きしめて耳元で聞いてくる。
その声に背筋がぞくぞくと震えた。
「光忠…」
「今日も誰かに抱かれたの?」
石切丸に抱かれてからはもう1週間近くが経っている。
その間はまた細切れでの勤務。
私の力に気づいた一期が短刀くんたちの池田屋に連続出陣するのを止めてくれているのもある。
あまり難しくないところとか、遠征なんかが中心の出陣計画にしていたのもあり、私がいなくても中傷程度で済んでいたらしい。
私がいない間に手入れも済んでいて、報告でしか聞いていないのだけど。
「ごめん」
「ほんとは泊まる予定じゃなかったのに、そうせざるを得なくなっちゃったんだよね?さすがに僕にでも主の表情くらいなら読めるよ」
光忠は言った。
「主の部屋で呑んだとき、鶴さんたちが話していた意味はまだ判らないんだけど、表情ならきっとどの男士でも判ると思う」
顔に出てしまっていたか。
「ねぇ主。ツラくなる前にちゃんと僕に言いなよ?じゃないと守ってあげられない」
「…うん」
「主、好きだよ」
光忠の肌はもう乾いてしまっている。
光忠の声に元気がないのが気になってしまい、無理矢理後ろを向くと光忠に唇を塞がれた。