第6章 美しい悲劇
「主さんとお風呂入るの久しぶり」
堀川が私の傍まできて抱きついてくる。
「!!兄弟!!?」
山姥切が焦るが、どうにもしようがないのか頭に被っていたタオルで顔を隠した。
「堀川くん?山姥切さんがびっくりしてるよ」
「兄弟は奥手だからね。僕は主さんが服着ていようと裸だろうと抱き締めたいだけだし。…だけど清光さんはズルいなぁ。主さんの裸独り占めしちゃったんですもんね」
私の顔を両手で包むとそのまま口づけてきた。
「ほ、堀川くん?」
歌仙の表情がひきつった。
「わぁぁ、ボク、何も見てませんっっ」
「別に主さんは清光さんだけのものじゃありませんよ?清光さんが勝手に手を出しただけじゃないですか。主さん優しいから清光さんに許しちゃっただけですよね?」
言いながら何度も口づけてくる。
「あのね、主は…」
光忠が何か助け船を出そうとして、やめた。
だよね。やっぱ言えないよ、ね。
「ふふっ主さん、今日はどのくらいいられるんですか?」
口づけることに満足したのか、私を解放し、しかし肩が触れあう位置に座っている堀川が聞いてくる。
本当は夕食後までしっかり過ごして帰ろうかと思っていたけど、誤算が生じてしまっている。
「ねぇ、私ってここに泊まってもいいものなのかな?」
聞くと、
「そんなに時間とれたの?」
光忠が驚いた声を上げた。
「うん。子どもたち私の実家に泊まりに行っちゃって居ないし、旦那も会社の泊まりでの合宿でいないんだよね。帰ってすることもないし寂しいからいてもいいのかなって」
「いいよ!大歓迎!みんな喜ぶね」
「ボクも嬉しいです!」
「主さん、まだ長州のお酒残ってますよ!呑み倒してやりましょうよ!」
「まだ残ってたんだ」
あの酒豪たちだったら一晩だろう思っていたのに。
「みんな主と呑みたくて手を付けないでいたんだよ」
歌仙が教えてくれる。
「ねぇ主さん、お泊まりできるってことは僕も主さんとえっちできちゃったりするんですか?」
キラキラした澄んだブルーの瞳で聞いてくる堀川。
「できません」
即答した私に、
「えーーー。やだー。僕も主さんとえっちなことしたいーーー」
また私に抱きついて揺らしてくる。
「兄弟いい加減にしろ!」
山姥切が手を伸ばし、堀川の頭を叩いた。
「いたぁい」
唇を尖らせて不満気に堀川は言う。