第6章 美しい悲劇
目が覚めるとまだ小狐丸の部屋だった。
布団に寝かされてはいるものの、丸裸の状態で。
そして酷く頭が痛い。
二日酔いとも偏頭痛ともなにか違うような、そんな頭痛。
身体を起こそうとかと思ったが、やめた。
「目が覚めたか?」
「え?ぁ、ゎ…」
小狐丸のものとは違う声が聞こえ、痛みを振り切り身体を起こした。
「小狐丸は厨に行っておる。だいぶ楽しめたようだな。ご機嫌であったぞ」
そうだ。この部屋は三日月の部屋でもあったんだった。
薄い掛け布団を引き寄せ身体を隠しながら俯くと、
「別に叱っているわけではない。そのような顔をするな」
そう言いながら茶を注ぎ差し出してくれた。
「あ、りがと、ござま…す」
「石切丸も小狐丸も、お主への思いが相当強いようだな。主の力がだだ漏れになってしまっておる。ツラいのではないか?」
身体を隠したままお茶に手を伸ばした。
落ち着け。私…。
「頭が、痛いです」
「そうか。やはりそうなってしまうよの。加減を知らんとは、あやつらもまだ若い」
いや、多分三日月が以前たくさんイかせた方が私がすぐ寝落ちして仕事の予定を組みやすいから、と言ったせいだと思う。
とは言えないけども。
「大丈夫か?」
「…あまり、動きたくない、です」
正直本気でツラい。
三日月と話しているのさえキツい。
「そう、か」
三日月はそう言うと立ち上がり私の傍まで来た。
そして私のすぐ隣に腰を下ろすと、裸の私を抱き寄せる。
「あ、の…」
「俺は天下五剣と呼ばれるものだ。故に俺の霊力はこの本丸の男士の中では誰よりも強い」
私の頬に手を添え、顔を上げさせた。
そして青い瞳で私を見つめると、
「俺の力を分けよう」
口づけてきた。
分ける?何それ。意味が判らない。
何かを注ぎ込むかのように舌を絡ませ、あまり長くない口づけは終わった。
「どうだ?楽になっただろう?」
「…確かに…」
先ほどまでの頭痛は薄くなっている。
「俺の霊力はお主の審神者力というものとは違う。そして、お主の審神者力がなければこの力を使うことはできない。やはり主がいないとなにもできないとは」
刀だった頃とはなにも変わっていないのだな、と少し悲しそうな目をした。
「なに、ツラかったら俺が主を助ける、ただそれだけの話よ」
三日月はそう言って私の肩を撫でた。