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夢より素敵な 3.5次元

第1章 プロローグ


「じゃあ行くか」

私が他の部隊にも声を掛け終えたところで鶴丸が切り出した。

「気をつけてね」

「まぁかせちょきぃ」

送り出すことにはいまだに慣れない。

不安になる私の頭を陸奥守がぽんと叩いて過ぎて行った。

「いーなぁ清光。ずっと主と一緒にいられるんでしょ?」

安定が僅かに頬を膨らませる。

「そーだよ。今週はマジで俺が主お世話係だからねー」

長谷部もごめんねー、と清光が手をひらひらと動かした。

「うるさい。俺は主命とあらば出陣するだけだ」

「俺はその主命で主のそばにいるんだからねー」

「はいはい、さっさと行ってさっさと帰りますよ」

口喧嘩をし始めるふたりの間に入り、宗三が長谷部を引っ張っていった。

出陣する皆が広間から出て最後に鶴丸が、

「主、無事に戻ったらまたキスをしようじゃないか」

確かにはっきりとそう言い切った。

その言葉に、玄関へと進んでいた男士たちの数人はぶつかり、私の隣にいた清光が殺気を纏う。

「…鶴丸?どういうこと?」

「ははっ、加州は意味を知っているのか。驚いた」

自分が知らなかったから他の男士も知らないと思っての発言だったらしい。

「知ってるに決まってるでしょ?知らないのは鶴丸とか三条派くらいのじじぃたちだけなんじゃないの?」

清光の機嫌を損ねたらしく、発言が際どくなりはじめている。

「じじぃとは聞き捨てなりませんね。加州殿、畑当番をしながら詳しく話をしましょうか?」

小狐丸が清光の二の腕を掴んで畑のある方へ引き摺っていった。

「主っ!助けて!!」

暴れるも力では勝てないらしくそのまま遠ざかっていく。

「国永もさっさと行くぞ」

大倶利伽羅が戻ってきて鶴丸の胸ぐらを掴んで引っ張っていった。

私もとりあえず見送ろうと玄関まで追いかけた。

「なぁ主」

「…なに?」

「…いや、何でもねぇ」

何かを聞きかけやめた和泉守。

場の空気をおかしくしているのは完全に鶴丸のあの発言だ。

「主さん、行ってきます。帰ったら僕ともお願いしますね!ほら、兼さん行くよ」

さらっと問題発言をして堀川は玄関から駆け出して行った。

全員を送り出したあと、

「…みんなが帰ってくる前に帰ろうかな」

ぽつりとひとり呟くと、

「それはダメだよ。一緒に夕食してくれるって言ったじゃない」

出陣のない光忠が返してきた。
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