第1章 プロローグ
半泣きで訴えると、
「とりあえず主が配偶者とやらに黙っていれば何も問題ないんじゃないのか?」
俺たちは主の配偶者には会わないわけだし、そもそも刀だし、と笑う。
「だけど…」
「主は身体の関係と言ったが、口吸いは身体の関係になるのか?」
「…判らない」
俯いている私の肩に手を置き、
「口吸いはよしとしようじゃないか。俺は主が好きだから口吸い、否キスが出来て嬉しかったし、加州も好きだからこその行動だろう?主は嫌だったか?」
「嫌じゃ、ない」
首を左右に振りながら言う。
「ただ、久しぶりすぎてドキドキしすぎて心臓が飛び出しそう」
訴えると、
「それは驚きだな。飛び出してきたら俺が押さえ込もう」
鶴丸は楽しそうに笑った。
「さて、俺は第一部隊の隊長に任命されたわけだし、出陣の準備でもしてくるとするかな」
立ち上がり腰に手を当て身体を捻る。
「主も他の出陣するやつらに声掛けてやってくれよ?」
そういうと、鶴丸は審神者部屋から出ていってしまった。
鶴丸は大人だ。完全に私が踊らされている。
心臓は収まる気配はないし、声を掛けにいくにもまだ部屋からは出られそうになかった。
「主入るよー」
またしてもぼんやりと先ほどのことを思い返していると、今度は声を掛けてから襖が開かれた。
着替えてきた、と今度は内番着姿の清光。
今日はここに来てから清光のファッションショーを見ている気になってくる。
「清光は畑当番だったっけ?」
「そー。主も行くんでしょ?その格好だし」
「うん。でもその前に出陣する男士たちに声かけてくる」
「じゃー俺もついてくー」
立ち上がった私に清光は笑顔を見せてくれた。
広間に戻ると出陣予定の男士たちが戦闘服を身に纏って集まっていた。
「大将ようやく俺たちを使う気になったんだな」
少し棘のある言葉で薬研が言った。
「ごめん。だってなんか短刀くんたちは可哀想で…」
「可哀想ってなんだよ。ガキ扱いすんな!」
「厚、言葉遣い」
私の言い訳に不貞腐れたような厚。それを咎めたのは一期で。
「いいよ、一期さん。これは完全に私の采配ミスだったんだし」
今朝鶴丸に言われ、審神者としては反省点ばかりだ。
「ま、気にすんな。バッキバキに強くなってやるからさ」
愛染の言葉に、第二部隊の短刀たちが力強く頷いてくれた。