第5章 jackal
「俺はあんたの涙をみるとどうしたらいいのかわからなくなる。だから、もう酒を呑んで泣くのはやめてくれ」
それが大倶利伽羅の唯一の頼みなら応じよう。
「主、それでも泣きたくなったらこの一期一振が胸をお貸ししますぞ」
宣言してくれた。
「一期くん今日はやけに饒舌だねぇ。さっき主を迎えに行って何かあったの?」
光忠は鶴丸から紙パックを奪うと手酌しながら問った。
「…僭越ながら、口づけを」
言いながら頬を赤らめる。
てか何で言っちゃうかなぁ、真面目か!!
その言葉に光忠と鶴丸がヒューと口笛を吹いた。
小さくため息をついてしまったが、
「一期一振もやるなあ。次は俺が主を啼かせてみるかな」
大般若はまた恥ずかしげもなくそんなことを言う。
「大般若はダメだ。なぜなら主は俺のモノだからだ。どうだ、驚いただろう?」
「いや、驚きはしないな。あんたのモノもなにも今日のこの気は鶴丸サンじゃないだろう?」
大般若の言葉に鶴丸が、
「そうだ!一体なんなんだこの気は!普通じゃない!」
「それは私じゃあないんじゃない?」
そう言ってはみたものの、
「主以外にこの暖かい気を出せるものはいませんぞ」
一期が言った。
大倶利伽羅は淡々と酒を呑んでいる。
てか、この気の変化に気づくの数人だって石切丸言ってたよね?
だとしたらその気づくメンツが今割と揃ってるわけ?
「…伽羅さん、このひとたち怖い」
助けを求めたが、
「知らない。俺には関係ない」
一蹴されてしまった。
「主、何なんだ?」
誰なんだと聞いてこないあたりに優しさは感じたが、
「え、言わない」
黙秘を貫いた。
とりあえず短刀くんたちの帰還まで見届けたからもう帰っていいんだよね?
注がれているこの一杯を空にして立ち上がろうとすると、
「まだ時間あるんだろう?ギリギリまで付き合えよ。嫌だとは言わせねぇ」
大般若に引き留められて、まだしばらくいるはめになった。
頭痛はまだ引かない。どころか更に酷くなっている。
お酒呑んだからかなぁ、なんて思うしかなかった。
そして漸く解放され元の世界に戻ると、予想を違わず昼前だった。
子どもたちはまだ寝たままで、昼食が出来たら起こそうとキッチンに向かった。
あれだけ酷かった頭痛は、いつの間にか感じなくなっていた。
一体なんだったんだろう。