第1章 プロローグ
「そか。じゃあ俺着替えてくるね!」
そう言って審神者部屋から出ていこうとした清光は何を思ったのか足を止め向きを変え私の元に駆け寄ってきた。
そうして座っている私に目線を合わせるように膝をつくと、一瞬私の目を正面から見つめてくる。
そして、
「主、だぁいすき」
そう言ってチュッと音が響いた。
「…」
突然のことに目を見開いたままの私。
「…き、よみつ?なにっ…」
「主に好きって伝えたかったの!」
咎める私を黙らせるようにもう一度唇に柔らかい感触。
キス、かぁ。。。なんだか久しぶりな気がする。
なんてぼんやりと余韻に浸る私を無視して清光は立ち上がり着替えに出ていった。
すると代わりに伝達を終えた鶴丸が戻ってきて、
「おや?主。なんだか顔が赤いが…」
「鶴さん…清光にキスされた」
「は?きす?」
「うん。これって不倫になる?」
「へ?ふりん?」
一方的な私の報告に鶴丸は疑問符ばかりを浮かべる。
「ふりんだとかきすだとか、主は何を言っているんだ?」
鶴丸にはどうやら通じない単語があったらしい。
「あの、ね」
こくんと唾を飲んで、
「私結婚しているじゃない?」
「けっこん?祝言を挙げているということか?」
「たぶんそれ。でね、なのにキス…あの、口づけ?接吻?って…」
真っ赤になりながら先ほど清光とした行為を鶴丸に報告する。
すると、
「ひょっとして、主」
口吸いをしたのか?と鶴丸が、私との間を詰めてきた。
「口、吸い…?」
「そう、こういう…」
左腕を私の背に回して逃げられないようにして鶴丸は私に顔を近づけてきた。
「え?は?…鶴さん?」
拒む猶予もなく鶴丸の唇が私のそれを塞ぐ。
そして、いかにも口吸いという言葉が相応しいかのようにちゅうっと吸い上げてきた。
「んんっ…!?」
清光だけでなく鶴丸からもキスをされ、パニックを通り越して意識が飛びそうになる私の思考。
無理やり理性をかき集めて鶴丸の胸を押し返した。
「…鶴さん、どした?」
「疼いた」
「は?」
「俺自身が一番驚いてる…」
自分の口元を押さえながら鶴丸が言う。
「清光だけでなく、鶴さんとも…」
不倫の定義って何?と唸りながら掌で顔を覆い隠す私に、
「…ふりんとは?」
鶴丸の声がする。
「配偶者以外と身体の関係持つこと…」