第5章 jackal
「あー主ー?」
遠慮がちに声を掛けられて振り返ると、
「清光」
「あのー、昨日はごめん。あと今までも、ごめん」
泣きそうな顔で謝ってきた。
「なんで清光が謝るの?悪いの私の方だし」
そもそも私が節操なしなのが原因だ。
他の男士侍らせて清光の心を少なからず苦しめていたのは確か。
「だけど…俺が主を」
「はい黙ろうか」
核心部を言いそうになったから、清光の手をとり縦にぎゅっと握り締めてやった。
「いったぁ!!何!?」
「昨日はしょうがない。三日月さんが暴走したからね。だけど今言う必要はないよね?」
小声で清光を睨み付けるように言うと、
「あ、そか」
短刀くんたちや知らない男士もいることに漸く気付いて黙ってくれた。
よしよしこれでいい、と手を離すと、
「主様は加州様が本当にお好きなんですね。ボク妬いちゃいます」
今日は昼食の手伝いをしている物吉が言った。
「そうなの?主…」
他の男士からそう見えているようなその言葉に打たれたのか、
「ホントにごめん!俺が主信じないと意味ないのにっ」
清光が泣き始めてしまったから、
「もー、泣かないの!」
泣きながら抱きついてきた清光の背中をトントンと叩いて宥めておいた。
「やはり来ていたんだね」
昼食の匂いに誘われたか、石切丸が顔を出し、私に言った。
「加州さんはどうしたんだい?」
「泣かせちゃいました」
まだぐずぐずな清光を宥めている私に、
「君はまた強くなったね」
そう言ってくれる。
「あるじぃー」
清光はなかなか泣き止んでくれず、困り果てていると、
「もう、いい加減にしなよ、清光!首落とすよ!?」
安定が助け船を出してくれた。
なんとなくだが私と清光の今の状況、関係性を知った上で、とりあえず様子見といったところだろうか?
「主ちょっといいかい?」
安定に連れて行かれる清光を見送っていると石切丸に声を掛けられた。
「はい」
返事をするとついてこいとでも言うように背を向け歩き出した。
慌ててそれについていくと、石切丸の部屋にたどり着く。
「まぁ、入って」
私を招き入れると障子をしっかりと閉めた。
促されるまま石切丸の前に座ると、
「身体はなんともないかい?」
「…はい?」
一体なんのことだろう?と首を傾げると、石切丸は小さくため息をついた。