第5章 jackal
「あのなぁ、何があったか詳しいことは聞かないし、知らなくてもいいが、あんたのそういった態度がここの男士たちの顔を曇らせてるってのがわかんねぇか?」
「…そうなの?」
「そーだよ!オレらはみんなあんたに会いたいし顔が見たいんだ。声を掛けてもらえればそれだけで嬉しいし、一緒に何かできりゃ心が踊る。それなのにあんたがオレらから逃げるような態度ばっかとってんじゃ、気持ちも鬱ぐばっかだよなぁ」
机に片手で頬杖をつきながら和泉守は言った。
「…兼さんもかっこいいじゃん」
乱暴だが妙にしっくりとくるその言葉に思わず言うと、
「なっ…いきなりそういうこと言うな!!」
照れたように顔を背けた。
「とにかく仕事が終わったからってさっさと帰るんじゃなくて、ちょっとでもいいから顔見せてやれ」
和泉守に言われ頷くしかなかった。
「主、今日昼飯は?もうじき出来ると思うが」
「子どもが寝てる間に出てきたからねー。今日は帰るつもり」
長居できない理由があるのだ。仕方ない。
「そうか。子どもって娘だったか?」
「うん。だからここの短刀くんたちは息子育ててる気分になるときがあるよ。そんなこと言ったら一期さんや宗三さんに怒られそうだけど」
「怒りゃしねぇだろ。つか主の娘だったらあんたに似て可愛いんだろうな」
「私よりはずっと可愛いんだけど、お見せできなくて残念」
親の贔屓目もあるかもだけど、本当に娘たちはかわいい。
口も達者になってきたが、見た目も成長して大人びてきた。
「そうだな。見てみたいもんだ」
和泉守はそう言って立ち上がった。そして、
「とりあえず顔見せに行こうぜ」
私に促す。
だから私も重たい腰を上げた。
和泉守の後を追って広間に行くと、何人かの男士が寛いでいる。
「あ、あるじさまだ!」
「大将、重役出勤だな」
気付いた短刀くんたちが声を掛けてくれた。
「重役出勤って、どこで覚えてくるの薬研」
「俺は何でも知ってるぜ」
薬研はそう言ってニヤリと笑った。この子の知ってるは本当に何でも知ってそうである意味怖い。
そして、
「主、昨日はよく眠れたか?」
長曽祢が聞いてきた。
「まぁ、ね」
濁した私に、
「よく眠れたんなら問題ないさ」
目を細め笑ってくれた。