第5章 jackal
昨日帰って時計を見ればまだ昼過ぎのままだった。
子どもは出掛けていたので、涙と酒でぐずぐずの私を直接見てはいない。
それでもなんとか子どもたちが帰ってくるまでに酔いを少しでも冷まし、通常営業に戻ってないとな、と力を振り絞った。
だから多分、私の様子がおかしかったことには気づいていないのだと思う。
そしてまた、朝を迎えた。
今日は図書館にいきたいと騒ぐので、連れていくことにした。
夏休みはまだまだ続く。
子どもたちに本を選ばせながら私も気になって探したものがある。
ぐるぐると本棚を巡り、ようやく見つけた一角。そこにあったいくつもの刀剣の本。
手に取って広げた。
すると、どうやらページが伸びるようになっていたようで、重力でパタパタと広がってしまった。
そこには実物大だと思われる刀剣の写真。
端に鶴丸国永と書いてあった。
「これが鶴さん…」
小さく呟いて、伸ばしてしまったページを元に戻した。
それともう一冊。刀と所有者との由来が書いてある本を私は借りて帰ることにした。
「お母さん最近刀剣好きなん?」
「ちょっと、ね」
持って歩いている私に気づいた娘が聞いてくる。
「ふぅん。私にはよくわかんないや」
興味もなさそうにそう言って娘はライトノベルを手に取っていた。
まぁ、私もよくわかんないから知りたくなったんだけどね、なんて言いはしないけど。
借りて帰った本をテーブルの上で広げてみる。
鶴丸だけでなく、三日月や長谷部、大般若も見つけた。
写真とはいえ少し怖いけど、なんだかキレイだとは思う。
粟田口も兼定も載っていた。
「みぃんな刀。変なの」
顔を上げると、娘たちは本を読みながら寝落ちしていた。
今日は行きたくはないけど行かなくちゃね。
仕事は仕事。男士は男士。
刀の本を閉じ、本丸に向かう準備をした。
今日はどのくらいいられるかな。
昼寝の時間を考慮しても昼食までの30分からよくて1時間弱が限界か。
だとしたら向こうには1時間半から2時間程度。
出陣計画の見直しとその他諸々を近侍に伝えるので精一杯だろう。
今日の近侍は誰だったっけ?
行けば判るか。
気合いを込めてクローゼットに脚を踏み入れた。