第4章 解けない魔法
「わぉ、伽羅ちゃんかっこいい!」
「伽羅坊男前!!」
光忠と鶴丸が茶化した。
「うるさい」
私を鶴丸たちのところまで引きずっていくと、乱暴に手を離し、
「泣くな。あんたの涙を望むやつなんていないから迷惑だ」
言い捨てた。
「伽羅ちゃん…」
呆れたような表情をする光忠。
私は顔を手で押さえ、必死で涙を引っ込めようと努力はした。
「っく…」
「あーもう泣くな」
清光への涙と大倶利伽羅の言葉に嗚咽を止められなくなってしまったダメダメ審神者の私に、大般若が声をかける。
「せっかくのかわいい顔が台無しになるだろう?」
そう言ってハンカチで私の顔を拭ってくれた。
「わぉ、更に男前がいた。驚いたぜ」
顔を拭ったあと私を胸に押しつけトントンと背中を叩き落ち着かせてくれる。
「あんたらもいくら主が可愛いからって苛めて遊んでくれるなよ」
呆れたように言い放った。
あまりに純度の高い男前度に、周りの男士が一斉に黙る。
そんな中三日月が、
「まぁ、ヤり逃げはよくないよなぁ、加州」
悪気もなく言った。
「三日月殿!!」
小狐丸が慌てて三日月を止めたが時既に遅し。
「はぁ!?清光!?」
「清光さん、また抜け駆けですか?」
「まっこと女心がわかっちょらんっちゅうか」
「やはりお覚悟願いましょうか」
「まったく雅じゃないよね」
「ありえん!!お前も主を何だと思ってるんだ!!」
矢面に立たされてしまった清光。
「だって…もうヤっちゃったもんはしょーがないじゃん」
不貞腐れてぼそりと言った。
「聞かなくていい。見なくていい。あんたは何も悪くない。耳を塞いで俺の体温だけ感じていろ」
大般若は耳を塞いだ私を胸に押しつけた。
とくとくと響いてくる大般若の鼓動。
耳からじゃなくて振動としてのそれに、ようやく先走っていた私の心音が速度を合わせた頃、大般若が私を横抱きにして立ち上がった。
弾みで耳を塞いでいた手を離してしまったが、みんなの声は聞こえてこない。だけど怖くて目は開けられないでいた。
大般若はそのまま広間を出ると、静かに歩を進める。
しばらく歩いて私を下ろすと、
「今夜はちとおいたが過ぎたな。あんたも俺たちも。だがまた懲りずに来てくれ。待ってるから」
そう言って私の頭を撫でて口づけ、私を玄関から送り出してくれた。