第1章 プロローグ
ようやく呼吸を取り戻した私の目に映ったのは少し呆れた表情の光忠と、難しい表情の山姥切、そして笑顔の堀川だった。
「…とりあえず仕事してきます」
そう言い残して私は鶴丸と審神者部屋へと向かった。
「時に主。今日の出陣計画に異議を申し立ててもいいか?」
机の上に紙を並べ、鶴丸が言った。
私の仕事はここで上から依頼されている出陣先に適切に男士を出陣させることだ。
「異議?」
「あぁそうだ。ここ暫く部隊が固定されているように思う。このままだと不満が出るのは時間の問題だ」
そう言われてしまうと私は審神者という肩書きを頂いただけできちんと仕事を全うできているのかは判らない。
「鶴さんはどう思う?」
「第一部隊のは出ずっぱりだからなぁ。少し編成を変えて休ませてやったらどうだ?」
特に加州とか、と清光の名前をトントンと指先で叩いた。
清光は私の初期刀で、経験も豊富、強さもピカイチだからつい第一部隊に組み込んでしまうんだ。
だから確かにあまり休みはないかも。
「そう、だねぇ」
「俺だってかなり強くなったと思うぞ?主の気に入りになれれば強くなれるって噂が飛び交うくらい。三条のやつらもだが」
「ぅっ…」
「だけどそろそろ短刀たちもしっかり鍛えてやらないと、困るのは主だぜ?」
確かに。
「…とりあえず今週は清光休ませます。鶴さんよろしくお願いします」
渋々清光の名前を下げ、鶴丸を第一部隊に組み込んだ。
そして第二、第三、第四と、バランスよくなるようほぼ鶴丸の指示通りに男士を振り分けた。
今日の出陣計画と内番計画を無事修正すると、鶴丸はそれを皆に伝えに行ってしまった。
ひとりになった審神者部屋でぼんやりとしていると、ばたばたと廊下を走る音が聞こえ、断りもなく襖が開けられた。
「主っ!!」
飛び込んできたのは清光で、
「俺今週出番ないの?ひょっとして俺のこと嫌いになっちゃったの?」
案の定出陣計画に文句をつけてきた。
「違う違う!鶴さんに清光働かせすぎだから他の男士たちにも出番をあげろって言われただけで…」
出陣する気満々だったのだろう、清光は戦闘服を身に纏っている。
「そう…」
少し気落ちしているように見える。
「だからね、清光、今週は私がここにいる間はずっと一緒だよ?」
そう言うと清光の顔がパッと明るくなった。