第4章 解けない魔法
「わぁ凄いね」
つまみを並べながら光忠が言った。
「差し入れー」
一期に運んでもらったものと一緒に置くと、光忠と堀川、それに陸奥守、長曽祢が覗きに来た。
「随分たくさんあるな。金、大丈夫なのか?」
「私ここで仕事した分ってきちんとお給料頂いてるんだよね。みんなのお陰で頂けているものだから還元したくて」
実際3倍になったんだ。正直余ってる。規定時間外はサービス残業だけど。
ここに来ることが楽しすぎてお金の使い方を忘れがちだし。
「それならありがたく戴きましょう」
堀川くんが言いながら段ボールの一升瓶を引っ張り出し、
「雁木、東洋美人、貴、五橋、獺祭…これって」
名称を読みながらピンときたらしい。堀川の表情が歪む。
光忠と一期は判らないようだったが、
「長州の酒、だな」
長曽祢の言葉に息を飲んだ。
「ははぁ、おまんは長州もんがか」
陸奥守が笑った。
「うそぉ…僕めちゃ今ショックなんですけど…」
額を押さえる堀川に、
「まぁいいじゃないか。俺と陸奥守もこうして酒を酌み交わす仲になったんだ。長州とも仲良くしようじゃないか」
さすが長曽祢だ。
「そーじゃそーじゃ。主は長州ゆうてもあのころの長州もんとは違うしの!やはり好きなんは高杉晋作っちゅうところか?」
その声が聞こえたのか安定と和泉守が寄ってきた。
「今とんでもないことが聞こえてきたんだけど…」
「おい主、オレの前でその名前を出すたぁいい度胸してんじゃねぇか!?」
「私は言ってないよー」
実際長州もんにしても高杉晋作にしても否定も肯定もしてないわけだし。
「でも高杉さんの刀っていないですよね?」
「だね。聞いたことないなぁ」
「おまんは高杉の刀のことはなんか知っちゅうんか?」
「全然。むしろ興味があるのは新選組の方だし」
言うと、
「主さんっ!!」
堀川が抱きついてきて、
「そうだよね。主さんは僕たちの方が好きだよね?」
嬉しそうに私の頬に頬を押しつけてきた。
「とりあえず呑もうか」
適当に座りながら五橋からいこう、と蓋を開けると、物吉が近づいてきた。
「主様っボクがお注ぎします!」
「おー、今日は珍しいのもいるじゃねぇか」
物吉の姿に和泉守が言った。物吉は普段は参加しない方の男士のようだ。
「私が誘ったの」
返しながら酒を注いでもらった。