第4章 解けない魔法

左側に物吉、右側には堀川を侍らせている状態の私に、

「国広、最近主とベタベタしすぎじゃねぇか？」

向かい側にいる和泉守が言った。

「最近主さんにまとわりついてるのがいないからチャンスかと思って！」

主さんどうぞー、と空になったお猪口に酒を注いでくれた。

「そういえば…」

安定も気づいたらしい。

視線を巡らせると清光は少し離れた場所で山姥切や歌仙たちと呑んでいた。

「なんかあったの？」

「別に…」

安定に返した私に、光忠が少し苦笑する。そして、

「加州くんは案外オコサマだよね」

なんて言った。

「どうでもいいんですよ、そんなこと。今は僕が主さんを独り占めできることの方が大事ですから」

言いながら自分も酒を呷る堀川に、

「独り占めにはなってませんぞ」

一期が釘を刺した。

そういえばさっきまで大きな声で喋っていた和泉守の声が急に聞こえなくなったと思えば、また座ったまま瞼を閉じている。

「兼さん、また…？」

長曽祢に聞くと、頷いてお猪口を指差したあとその指を立てた。

やっぱりお猪口一杯で…。

お酒弱いのに絶対参加するとか、この雰囲気が相当好きなんだろうなー。

「ねぇ物吉くん、兼さんつついてみてよ」

言うと、

「ボクが、ですか？」

「面白いですよ」

堀川ものっかってくる。

「じゃあ…」

そろそろと回り込んで、和泉守の肩をトントンと叩いた。すると、予想通り後ろに倒れる和泉守。

「ひぃっ！！ごめんなさいごめんなさいごめんなさいぃぃー」

涙目になって戻ってきた。

そんな姿をみてうひゃひゃと笑う私と堀川。

「大丈夫、なんですか？」

「大丈夫大丈夫。寝てるだけだから」

焦る物吉の頭を撫でて宥めた。

「今夜の君は脇差と交えているのかい？お酒のことだよ」

気づけばにっかりが真後ろにいて、私の肩に手をおき耳元でそう言った。

思わずびくりと肩を震わせると、

「僕も脇差だよ？傍にいてもいいかい？」

するっとその腕を私の胸元に下ろし抱き寄せた。

「…にっかりさん酔ってます？」

「ふふふ、どうだろうね」

言いながら私の持っているお猪口を手に取り呷った。

「にっかり様妖しさが増してますね」

物吉はなんだか楽しそうだ。

頬もかなり赤くなっているし、こちらは酔っているように見える。

なんだかとっても可愛い。