第4章 解けない魔法
「あの、そこまでしてしなければならないことなのですか?」
私が問うと、
「現に今またこの本丸には力がみなぎっている。そしてそのことを理由は知らずとも感じとっている男士たちはどうやら滾り始めているようでね、先ほど短刀たちは隊を組んで自分たちの力を試したいから京都市中へ行かせてくれと言い出したんだよ」
それで石切丸はここに来たとき私を探しているようだったのか。
「京都市中って…」
危険だが短刀の効率が最も上がるところ。
鶴丸に言われてから短刀くんたちをまめに出陣させるようになり、今ではかなりの強さになっているが。
「やはり危険だとは思う。でも今なら君の加護がある。行かせてみてはどうだろうか」
石切丸の提案に少し悩んで、
「判りました」
返事をした。
私はずっと短刀くんたちを戦場に出すのが怖かったのだけど、戦って強くなって帰ってくる彼らの表情は日を追う毎に大人びてきている。
自信に満ち溢れているとでも言おうか。
今ならばもう短刀くんたちの強さを信じる方が勝っていた。
「ははは。主も強くなったな。審神者の力が最も発揮されるのはやはり出陣する男士たちを信じたときだ。お主からはここ最近、出陣する男士を見送るときの不安が感じられん」
以前石切丸に信じろと言われたのもある。
彼らが私に好意を持ってくれている、というのを知ったというのもある。
「ぬしさまの強さは私たちが作った、と自惚れたいものですね」
小狐丸が言った。
「ところで鶴丸さん」
石切丸が急に鶴丸に声を掛ける。
「なんだ?」
「一度殴ってもいいかな?どうにも先ほどから腸が煮えくり返って堪らないんだよ」
「そうですね。私も同じですね」
腰を浮かせ鶴丸に殴りかかろうとする石切丸と小狐丸。
「なっ…何故だ?俺が何をしたと…??」
「私の大切な主に手を出し、そしてあろうことかそのことを悪びれもなく私に相談するという」
言う石切丸の表情は笑っているようで目が笑っていない。
「待て!俺は本丸の為を思ってだな…!!」
「違いますよね?鶴丸殿は間違いなく鶴丸殿の欲の為でしょう?」
小狐丸も参戦してくる。
「あっっ、主っっ」
「ははは。お主らも若いな。そんな感情を抱くのであれば次はお主らが主を啼かせればよいだけのこと」
三日月の言葉に、私はもうため息すら出なかった。