第4章 解けない魔法
「話というのは?」
口火を切ったのは石切丸だった。
「それなんだが、主の眠るタイミングというのに一体何が影響しているのかと思ってな」
私よりも先に鶴丸が聞いてくれる。
「本日はどうだったのですか?」
「直後、だったぞ」
聞いた小狐丸に返した鶴丸の言葉に私は静かに頬を赤く染める。
やっぱり聞きに来ちゃダメだった。
てか、地味に恥ずかしい。死ねる。
「前回とは違う、と主が言うのだが」
そう言われ私に視線が集まった。
「前回というのは加州さんのときかい?」
「…はい」
「あのときは報告に出向いたら眠っていたんだよね。朝食の前から気の変化があったからその前辺りからだとしても直後、というには時間が開きすぎているね」
清光との後は、光忠たちと料理をして食事をし、そのあと出陣部隊を見送って、畑仕事、そしてお風呂に入った後だ。
だいぶ時間に差がある。
「眠っていた時間はどうなんだ?今日は1時間くらいだったが」
「あの日は大和守さんが見つけた時には眠っていたからねぇ。私の部屋に連れて行ってから目覚めるまではおよそ30分だから多分同じくらいなんじゃないかな?」
淡々と話す鶴丸と石切丸。三日月は黙ったままだ。
「せめて理由でも判ればな。主の仕事だとか動き方に合わせてやれるんだが」
私を気遣うそのやれる、という単語が今の私には犯れる、にしか聞こえない。
「理由は判るぞ」
ははは、と三日月が笑った。
「鶴丸はより多く気を遣らせたのではないか?」
青い瞳を光らせながら言った三日月に、
「三日月殿!!?」
小狐丸が慌てる。
「…あぁ、まあ。主に驚きの快楽を与えると約束したからな」
「それだ。加州はまだ若い。主に与える快楽よりも自分の快楽の方が強かったのであろう」
清光のあの愛撫でも清光の快楽の方が強いというのか?
私はとても気持ちよかったのに、なんて思ってしまい思わず首を横に振って考えるのをやめた。
「主何をしているんだい?」
「なっ…なんでもない」
石切丸に指摘され俯く。
「よきかなよきかな。これで判ったろう?主により多くの絶頂を与えれば、直後に寝落ちる。さすれば、それを考慮してやれば主の仕事には影響がでないということ」
三日月は落ち着いた声音でとんでもないことを言ってくれている。
私は更に俯くしかなかった。