第4章 解けない魔法
鶴丸の声に耳を赤くしながら、置いてあった下着に手を伸ばした。
鶴丸に背を向けてワンピースを少し下ろし、ブラを被る。
いつからだろうか。
胸の形を整えるワイヤー入りのものが窮屈になり、すっかり被るタイプのブラトップを愛用している。
これもババアの原因のひとつだろう。
色気よりも楽さ。結局そちらを選んでしまったのだ。
そしてまたワンピースを肩まで上げると、脚にショーツを通した。
無理やり座ったまま引き上げて振り返ると、鶴丸に抱き締められた。
「鶴さん?」
「主、ありがとな。今日はたくさん主といられて嬉しいぜ」
ふと身体を離すと、口づけられた。
「しかし、眠るタイミングが判らないとなると苦労しそうだよな。やっぱ三日月にでも聞いてみるか?」
「んーー、だねぇ」
私の手をとって立ち上がると、鶴丸はそのまま三日月の部屋まで引っ張っていった。
「三日月、ちょっといいか?」
「あぁ、構わんぞ」
障子の前で声をかけ、許可を得てから開けた。
三日月の部屋には小狐丸も居て、
「おや、ぬしさま。もう目覚められたのですか?」
私に気付いて言った。
やっぱり夢現で聞いた声は間違いじゃなかったんだ。
小さく頷くと、鶴丸と共に三日月、小狐丸の前に座った。
「石切丸も呼ぼうか?」
「ぅん」
確かに、石切丸もいた方が話が早い気がする。
鶴丸が石切丸を呼びに出ていき、ふたりと対峙した私はなんだか判らない気まずさに俯いた。
「どうかしたのか?」
石切丸に前聞いた話だと、三日月は絶対に気付いているはずなのに、私に問いかけてきた。
顔を上げると優しく微笑んでいる。
「三日月殿、ぬしさまを困らせてはいけません」
目を反らせなくなってしまっている私に気付いた小狐丸が言ってくれたが、
「俺は何もしておらんぞ」
と笑う。
天下五剣というものの圧力が私を無意識に押さえつけているようでもあった。
「えと…」
言葉に悩んでいると、
「石切丸連れてきたぜ」
張り詰めた空気を鶴丸が砕いた。
「おや主。ここにいたのか」
石切丸は私を見つけると優しく微笑んでくれる。
そして、私の近くまできて腰を下ろした。
鶴丸はその反対側に座る。
それを見て小狐丸が何か複雑そうな表情になった。
そして、
「輪になった方がよくありませんか?」
提案してくれた。