第4章 解けない魔法
どのくらいか鶴丸の膝枕で寝てすっきりした私は、突然の脳の覚醒に目を開けた。
「わっ…!起きたのかよ。驚いた」
「あぁ鶴さん…って!?え?」
身体を起こすと胸元が大きく開いていて、鶴丸の掌が何かを隠すかのように空中でわきわきと動かされている。
突然目が覚めた原因。多分。
「…何、してるのかな?」
「すまん!!つい」
「ついって、もー」
怒る気すら起きない。
「てかなんで私…」
素肌に服着てない?
「下着ならそこにある。主が急に寝落ちるからとりあえず服だけ着させたんだ。驚いたか?」
「驚いたよ。…でもありがと」
真っ裸で連れてきたわけじゃないというところに鶴丸の優しさを感じる。
「私どのくらい寝てた?」
「1時間ってとこだろうな。もう平気なのか?」
「うん、多分。1時間くらい寝たら済むんなら夏休み中毎日長居できるのかな?…あ、でも急に寝ちゃうみたいだからみんなに迷惑がかかるか」
前回も部屋の入り口に倒れていたらしいし。
悩む私に、
「主っ、毎日って…」
鶴丸の目尻が急に下がる。
「え?何?」
「毎日せっくすしてもいいってことなんだろ?」
とんでもない驚きだ!と鶴丸に言われ初めて気づく。
「…!!!そうだよ…無理だ」
さっきの言葉は性行為のことなんて全く考えてもいなかったからこそ出たセリフだ。
ただ純粋に、
短時間の犠牲で長く留まる+審神者力というのをとんでもなく使う=だから眠くなる
という方程式だった。
冷静に考えれば、
短時間の~、のあとに、そのためには男士に抱かれなくてはならない=審神者力が増して長居できる、だ。
「ごめん、嘘」
全力で否定すると、
「取り消させたくないな」
ぼそりと鶴丸が言った。
「でもなんでだろ。前回眠くなったタイミングと今回とじゃ随分違うんだよね」
「前回?…やっぱ主あのとき!!」
畑で泥まみれにされたときには、のらりくらりかわして逃げていたんだった。
「あ…」
「やっぱり加州がいちばんなのか?キスもせっくすも…」
「や、あの、私、そういうことするつもりなくって…気づいたら、その…」
しちゃってました。ってか?
なんてずるい言い訳。
最低じゃん私。反省点しかない。
「まぁいいか。さっきは俺が主を抱いたのは事実なんだしな」
気持ちよかったぜ?と耳元で言った。