第3章 mistake
「主、私はお先に失礼します」
真っ赤な顔をした一期が私に背を向けたまま立ち上がり湯船から出た。
「…俺も」
大倶利伽羅もそれに続き、
「俺ももう暑いーーー」
包丁と五虎退もついていった。
なんだよ、短刀以外みんな腰にタオル巻いてるじゃん。
またからかわれてたんだ、と思うと妙に悲しくなってしまった。
「そういや主、先日の夜に着ていたものはなかなかよかったな」
「おー、いつものおんしとはちごぅて色気もあったきに」
鶴丸と陸奥守が言った。
「何を着てたんだ?」
「寝る前だったからパジャマ着てきたの」
別にどうというわけでもなかろう。
「酒を呑むとまっことに愉快になるしのぅ」
「なぜ俺を呼んでくれなかったのだ?」
笑う陸奥守に長谷部が聞いた。
「加州が箝口令をしいたからな」
「あいつは独占欲が強いきに、酔うて可愛い主を他に見せとうなかったんじゃろ」
多分私の醜態を見せたくなかっただけだと思うけど。
「また夜にきてくれんか?」
「いいの?」
「えーがえーが!おんしと酒をのめるんは楽しいきに」
さっきの大倶利伽羅の話だとちょっと迷惑だったのかなぁ、なんて思ってたけど…。
「伽羅坊は主を心配してるだけだから気にするな」
「…うん」
「そのときにはぜひこの長谷部も参加させてください」
監視員だな、これは。
「じゃあ私はそろそろ出るよ」
「早いな」
「なんか、すごく眠たくて、またのぼせるのもね…」
置いておいたタオルを引き寄せ、なんとなく隠しながら湯船を出た。
どうしたことだ。
熱中症っぽくなったかな?頭もなんか痛いし。
身体を拭いて持ってきていた服に着替えて頭に手を添えながら外に出ると、一期が待っていた。
「一期さん、どうしたの?」
「弟たちが失礼を致しました」
頭を下げてくる。
「いや、こちらこそごめんね。一期さんだって私とお風呂とかいい迷惑だったろうに…てか嫌なら拒否していいんだからね」
主命だよ、とそこまで言って大きな欠伸をした私に、
「お疲れのようですね。部屋までお送りします」
「ううん、大丈夫。ありがと。一期さんも無理しないでね」
一期の申し出を断ってひとり審神者部屋へと向かった。
ほんっと眠い。
襖を開けて入った途端、倒れこむように眠ってしまった。