第3章 mistake
着替えをとってくる、と私だけ審神者部屋の近くまできていたのだが、どろどろだ。
どうしようかと悩んでいると、
「主!なんて格好なんですか!?」
通りかかった長谷部が声を上げた。
「鶴さんたちにやられたの。流してこようかと思うんだけど着替えを…」
そこまで言うと、理解してくれたのだろう。
「俺が持ってきましょう。どれですか?」
審神者部屋の襖を開けた。
「えっと…あ、その袋だ」
今朝持ってきた袋を指差すと、
「こちらですね。風呂場までお持ちしましょう」
それを手に取った長谷部が申し出てくれた。
長谷部は縁側を、私は外を並んで歩きながら風呂場までつくと、
「誰かいるようですが…」
賑やかな声に反応する。
「あー…一緒に畑してた男士たちも…」
「共に入ると?」
「まぁ…」
長谷部の顔が歪んでいくのが判る。下手したら風呂場に殴り込みそうだ。
「…長谷部も入る?」
一か八か聞いた私に、
「…っ主命とあらば」
顔を赤らめて返してくれた。
前回光忠たちと入ったときとは状況も違うし、見えていると判ってしまうと堂々と真っ裸で入る勇気はない。
泥を落とさないように気をつけて服を脱ぎ、バスタオルを巻き付けて振り返ると、腰にタオルを巻いた長谷部がすぐそばに控えていた。
「わっ!!びっくりした」
私が脱ぐのを見ていたのだろうか?
何も言わず、風呂場へと続く扉を開ける長谷部。
こそこそとついて入ると、
「主やっときた!」
包丁が湯船から立ち上がり私のところまできた。
もちろん少年真っ裸の状態で。
「なんで長谷部までいるんだ!?」
驚いた、と言う鶴丸に、
「主命だ」
と一言。
違う。
だけどもう説明さえ面倒で、
「主背中流してあげるー」
まとわりついてくる包丁とついてきた五虎退と共に洗い場に向かうことにした。
「あるじさまここに座ってください」
「これ邪魔ー」
椅子に座ろうとした私から包丁はバスタオルを奪う。
「ちょっと!」
「持っててよ」
焦る私にタオルを押し付けてきたから、とりあえずそれを抱き締めて前を隠した。
純粋に背中を流したかっただけらしい。
「鬼いません」
「ほくろしかないね」
ばざあっとお湯を掛けながらふたりが言う。
「人妻の背中!!この肉感がたまんない!」
「僕には、わかりません」