第3章 mistake
「で、だ。主」
「なぁに?」
「加州と寝たのか?」
耳元に顔を近づけ、他に聞こえないように聞いてくる。
「…!!?なんで!?」
「いや、一昨日主が帰ったあとヤバいくらい不安定だった主の力が今朝から急に落ち着いててな、そしたらどうにも加州との距離が近い気が…」
「清光はいつも距離近いし」
てか、私の力って男士たちには感じられるものなのか。
出してる本人まったく判らずなのだけど。
「そうか?いつも通りか」
「…うん」
「…嘘だな」
どーんと声を上げて鶴丸が私を転がした。
「え!ちょと!」
「鶴丸殿!何をしているんです!?」
それに気付きトマトの向こう側に立ち上がった一期。
「主を泥まみれにして吐かす!」
鶴丸は私に跨がり手に泥を付けては顔に擦り付けてくる。
何これ!?拷問!?
「鶴丸殿!」
回り込んできた一期が鶴丸を止めた。
わーわ、また泥まみれだ。畑仕事の度にどろどろにされてる気がする。
「どうしたんです!?鶴丸殿」
「…ついでに一期も泥まみれになりやがれ!」
一期の脚に自分の脚を掛けて引き倒し顔に泥を擦り付けた。
「何やってんだ!?」
「ぼ、僕も、やります!」
「俺も!!」
騒ぎに気づいた薬研たちもやってきて、収拾がつかない状態になりかけた。
「国永、いい加減にしろ!」
大倶利伽羅に止められるまで私と一期は、鶴丸に加勢した五虎退と包丁にも泥まみれにされてしまった。
「おんしらどうか?ちっくと泥がつきすぎちゅうが?」
大量のきゅうりを籠に入れた陸奥守が気づいたときには、私たちの服も顔も茶色の面積が倍増してしまっていた。
「国永、嫉妬は醜いし、一期一振は関係ないだろう」
「ちっ」
大倶利伽羅の言葉に鶴丸が舌打ちをした。
「大将ちょうどいい。ここが終わったら一緒に風呂行こうぜ」
「薬研!?」
薬研の発言に一期が困惑する。
「いち兄もそのままは嫌だろ?」
「…そうだが…」
「わーい人妻とお風呂ー!主、俺と背中流しあいっこしよーよ」
「おっ、鬼の話は嘘だったのを確かめます」
包丁と五虎退が賛成してしまい、一期も了承せざるを得なくなったらしい。
だがとりあえず収穫がまだ終わっていない。
熟れすぎなトマトを集中的に採り終えると、それを厨に運び、泥を流しに風呂場へと向かった。