第3章 mistake
「今日俺出陣なんだよねー」
食事を終えたあと、厨を覗いた清光が言った。
「よろしくね」
「うん。主のために闘ってくるよー」
そのやり取りを見ていた堀川が、
「僕も!主さんのために!」
にこっと笑ってくれる。
「さて、片付けも終わったし、着替えにいこうか」
光忠が促して厨から出て行った。
私も畑仕事に向けジャージに着替え、いつも通り出陣するみんなを送り出して、庭に出る。
天気が良くて気温もだいぶ上がってきた。
「主も畑ですか?」
声を掛けられ見上げると、一期がそこにいた。
「うん。一期さんもだったね」
「はい。あと鶴丸殿に人手が欲しいと言われ…」
一期の後ろには今日非番のはずの五虎退、包丁、薬研がいた。
「よろしくお願いします」
「人妻と畑仕事だ!よろしく!」
傍にそんなに居たなんて気付かなかった。気配を隠すのがうまいんだな…。
「大将、水分はこまめにとれよ?」
「はい」
確かに審神者が熱中症で倒れたってなったらまた迷惑かけちゃうもんなぁ。
畑には既に鶴丸と大倶利伽羅、陸奥守もいた。
「おんしもきたがか!見ぃ、こじゃんときゅうりもピーマンもできちゅう!」
既にいくつか収穫していたものを見せてくれる。
「わぁー!!おっきい!」
さぁ私も手伝おう、とひとり気合いを入れた。
「なぁ主」
何種類植えたんだろ、なんて色の異なるトマトの艶を確かめながら収穫していると、鶴丸が声をかけてきた。
「あ、鶴さん!ありがとね」
今朝光忠に聞いた件のお礼を言ってなかった。
「何がだ?」
「二日酔いの…その…」
どうにも核心はここでは言えないが。
「あぁ!驚いただろ?俺が酒豪主のレッテルを貼り付けてやったぜ!」
鶴丸が勢いよく親指を立てた。しかし、鶴丸からレッテルとは…。
「昨日覚えたばかりの横文字だからな」
顔に出てしまっていたか、大倶利伽羅が教えてくれた。
「ただ、あの呑み方は少しどうかと思う。泣き上戸なのか?」
「…私泣いてた?」
「…帰る前、泣きそうだった。楽しめない酒はやめた方がいい」
帰ると報告したとき既に涙目だったか。
大倶利伽羅はそれだけ言って黙り、別な場所へと移動した。
少し言葉に刺があるが、それが大倶利伽羅らしさなのだろう。