第3章 mistake
今から長時間居られるのなら、久しぶりに畑仕事も出来るかも、とジャージと着替えも持って行くことにした。
スマホはだいたい置いていく。
以前一度持って行ったのだが、電波が繋がるどころか電源さえもオフになって動かなかった。
ほんとに意味がない邪魔ものになってしまうのだ。
そして我が家のみんながまだ寝ているのをいいことにまた本丸へと通う私。
だけどもうそこに不思議と罪の意識とかは感じなかった。
玄関を開けると、清光がそこで待っていてくれた。
「どうだった?」
「時間経ってなかった。凄いね」
「だね」
とりあえず着替えを審神者部屋まで持って行こうと歩いていると、おそらくこの本丸で一番早起きだろう光忠と出会った。
「おはよ、光忠」
「主!!おはよう。今日は来れたんだね?昨日はみんな心配してたんだよ!?」
「ごめんなさい」
やはり無断欠勤はよくないな。特にこことは連絡手段がないし。
「でもまぁいいよ。主の気持ちが落ち着いてまたちゃんと来てくれたんなら」
「…お詫びに手伝います」
「オーケー。じゃあ一緒に朝食を作ろうか」
光忠に申し出ていると、
「主、荷物部屋持ってってあと片付けとくよ」
私の手から荷物を奪いとる清光。
片付け、というのは情事の痕跡のことだろう。
「…ごめん、お願い」
清光に荷物を託して私は光忠と厨に向かった。
とりあえず指示された通り野菜なんかを洗っていると、
「おや、主じゃないか。おはよう」
歌仙が顔を出した。
「歌仙さんおはようございます」
早朝からきちんと着こなしている。素敵だ。これが雅というのだろうか。
「やぁ、歌仙くん。おはよう」
「あぁ、おはよう」
歌仙が手を洗いに私の傍に来た。
「主具合はいいのかい?」
「へ?」
「昨日は二日酔いで休みだったと聞いたよ?しかもここの酒豪たちと呑み比べたらしいじゃないか。まったく雅じゃないね」
あのとき私の周りにいなかった審神者力云々の話を知らない男士たちには私が二日酔いということになっているのか。
もうみんなが同衾のことを知っているかも、と不安になっていたのだが杞憂に終わった。
洗った野菜を光忠のところに運ぶと、
「呑み比べと二日酔いの噂を流したのは鶴さんだよ」
小声で教えてくれた。
鶴丸らしい優しさに少し胸をときめかせる自分がいた。