第3章 mistake
まだ誰も起きていない夜明け前の薄暗い本丸の廊下を清光に横抱きにされたまま通過し、風呂場へとたどり着く。
「主、服ここ置いて」
私に指示を出し、従って腹の上の服を言われた場所に置くと、洗い場まで入って私を下ろした。
足をつき立ち上がると内股をとろりと流れ落ちる感覚。
清光のだ、と思った瞬間急に恥ずかしくなってしまった。
「身体洗お?」
言われて素直に身体を洗い、清光と湯船に浸かった。
「ふふっ」
隣で清光は嬉しそうだ。
濁り湯でも清光たちからは見えてるって判っていても、もう恥ずかしくはない。
すべてをさらけ出してしまったからだろうか。
「主とシちゃったー、セックス」
んー、と腕を上に伸ばしながら清光が言う。
「清光っっ!」
露骨な表現はやめてくれと咎めると、
「だって俺今超幸せなんだもん。おっきい声で叫びたい!主とセックスしたよーって」
満面の笑みで返してくる。
「やめてってば!」
赤くなって清光を止めるが、
「主が夕方までいたらどーせバレるよ?」
なんて言ってきた。
それはそうなんだけど…。
あーもう。恥ずかしい。
「ねぇ、主するの久しぶりだったでしょ?」
「…うん」
「でもすっごい気持ち良かったでしょ?」
「…ぅん」
「やーっぱ愛してっからねー俺、主のことってね」
「…うん?」
久しぶりでも気持ち良くて、愛されてる。それは判ったけども。
「私が清光を、じゃなくて?」
「んーん。俺が主を愛してるから、主はすっごい気持ちよくなっちゃうの」
だって神だもん。
なんて清光は笑った。
「ほんとにこれでこっちに半日いても向こうは15分なのかなぁ?」
「ほんとだよ。俺あれからちゃんと三日月に聞いたし」
「そっか」
まぁ信じる他ないよな。
まだ、空にはたくさんの星が見えていた。
「これが主の審神者力、俺と主の愛の結晶ってね。…でもまぁ心配なら今からいったん帰ってみたらいーじゃん。それで数分しか経ってなかったらそうなんじゃない?」
清光が提案してくれる。
夜が明け始めるのか、空の端の色がなんとなく白んだ。
「さぁ、のぼせないうちに出なきゃね」
風呂から上がると、清光の提案通り一度玄関を出てみる。
自分の部屋でスマホを確認すると、今日の日付に出たときから3分も経っていない時間だった。