• テキストサイズ

夢より素敵な 3.5次元

第2章 ユメひとつ


「おや主、同衾を知らないとは驚いたぜ」

先日の逆だな、と鶴丸が笑った。

「なぁに?ドキンちゃんとか雑巾なら判るけど…」

またしてもお酒に手を伸ばす私を光忠が止めた。

「ん?」

「本当に知らないの?」

「うん。知らない」

光忠の問いに素直に返すと、

「加州、主の判る言葉ならなんと言うんだ?」

鶴丸が清光に聞いたから、私も清光の方を向いた。

すると、私ににじり寄ってきて、口を耳元に近づけ小さな声で言った。

「…セックス」

その言葉に完全に私は目を見開いて固まる。

「あ…通じたんだな」

鶴丸がニヤリと笑った。

「…さてと、夜も遅いし帰ろうかな。だいぶ酔ったしね」

さすがに無理だ。

「昼間、石切さんが言ってたように来れる時だけ来まーす」

体重をかけていた小狐丸から離れ、立ち上がろうとする私のカーディガンを清光が掴んだ。

「帰るの?」

見つめてくる緋い瞳は熱を帯びている。

「帰るよー。ご主人様が帰ってくるからねー」

こんなときだけ存在をちらつかせるなんてずるいとは思うけど。

私の言葉に各々が黙ったが、

「今から誰かと試してみたらどうだ?」

三日月が言った。

「無理」

返す笑顔が引きつる。

「だから私はやめた方がいいと言ったんだ」

石切丸が少し冷たい視線を私に送ってきた。

「…神様はいじわるですねー。何も知らない審神者をからかって面白がっていらっしゃる」

精一杯の強がりだ。目頭が熱くなってくる。

「みなさんお邪魔しました。また機会があれば一緒に呑みましょうね」

泣きそうな自分を隠すかのように大きな声で広間にいる男士たちに告げ、勢いよく頭を下げると、広間を出て逃げるように廊下を走った。

もう涙が溢れそう。

意気揚々とやる気になって言いふらした自分が恥ずかしい。

早く帰ろう。

そして、疲れたからとメモを残して何事もなかったかのように寝よう。

酒の回った頭では何を考えてもまともな答えは出ない。

そんな私を追いかけてきた清光が引き留める。

「主、そんなに俺たちとするのが嫌?」

「…違う。そういうわけじゃない」

むしろ逆。

こんなに私を可愛がってくれて愛してくれる人に抱かれてしまえば自分がどうなってしまうかわからない、それが怖いのだ。

「ごめん、清光」

言い残して私は玄関を出た。
/ 341ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp