第2章 ユメひとつ
「俺のこと愛してるってみんなの前で言ってくれたら離してあげる」
わざとらしい声のボリュームで条件を提示してきた。
「…キヨミツ、アイシテル。アイシテルヨー」
感情の籠らない言葉を並べると、
「ぶはっ、こりゃいい」
鶴丸のツボに嵌まったらしく爆笑し始めた。
「主ー?怒るよ?」
「怒ればいーじゃん。そんなことして嫌われるのは清光なんだからね?」
安定に言われて、清光の腕から力が抜けた。
「主…」
振り返るとまた泣きそうな顔をしている。
「清光お酒は?」
「…呑めるよ」
「じゃあ呑もう」
持っていたお猪口を差し出し、酒を勧めた。
「お猪口足りないね。とってこよう」
光忠が立ち上がった。
「主はお酒を呑むと楽しそうだね」
長机を囲むようにしてお酒を呑む状況はなんとなく宴会というのが相応しいような並びだ。
「みんなはお酒は強いの?」
「今ここにいるやつは和泉守を除いてみんなイケる」
自棄のように飲み干した清光のお猪口に酒を足しながら長曽祢が教えてくれた。
「じゃあ楽しいね」
「だな」
あははーと笑う私を長曽祢が笑った。
それから1時間くらい経っただろうか。
光忠の持ってきてくれたお猪口にまたお酒を注いでもらいを繰り返し、かなりの量を呑んだ私はくてんとそばにきていた小狐丸に頭を預けた。
「また小狐丸…ほんっとムカつく」
清光がぼそりと毒を吐くと、
「ぬしさまは小狐がお気に入りのようですから」
私の頭を撫でながら小狐丸が返した。
「そーいえばー」
三日月と石切丸に聞かなくちゃならないことを思い出した。
「三日月さん石切さん、昼間の話なんだけど」
「あぁ、そうだよ。主まだ話してるのに途中で行っちゃうから…」
石切丸はやはり何か言いたいことがあったらしい。
「ごめんなさい。で、その方法って…」
みんなそれぞれにお酒を呑んでいて、今私の周りには清光と小狐丸、石切丸、三日月と鶴丸、光忠がいた。
簡単に昼間の話を説明してみると、やはり割と肯定的だった。
しかし、
「その方法っていうのが…」
石切丸はなんだか言いにくそうだ。
何なんだろう、と頭の中で様々なことを考えてみたのだけど、答えは出ない。
「同衾だ」
代わりに三日月が言った。
一瞬そばにいた男士が息を飲むのが判った。
「同衾って何?」