第2章 ユメひとつ
「兼さん寝てるの?」
「そー」
クスクス笑いながら肩を人差し指で押すとふらぁっと倒れた。
「ひゃひゃひゃ。お酒激弱だからいつもこう」
そのままむにゃむにゃと寝言を言い始める和泉守を堀川が笑う。
「どのくらい呑んだのかな?」
私の質問に、
「これ一杯だ」
と私の持っていたお猪口を長曽祢は指差した。
これ和泉守が使ってたやつなんだ。
てかこれ一杯で出来上がるとか下戸すぎるよ和泉守。
私既に二杯も飲み干してしまったし、もちろんまだまだイケる。
「主、食事もってきたよ…ってもう呑んでるの?」
「ありがと光忠」
光忠の用意してくれた食事にテンションが上がる。
「最近食べれてなかったからストレス溜まってたのー」
三杯目の日本酒を流し込むと、箸を手に持った。
「食事がチェイサー代わりかよ」
呆れたように笑う長曽祢。
そんな皮肉は無視して、
「んー美味しい」
手料理を堪能した。
「おんしまだ呑むじゃろう?」
今度は陸奥守がお酒を注いでくれる。
「むっくんありがとー」
「主もうかなり酔ってるじゃないか」
私の隣で光忠が言った。
「そりゃ呑めば酔うよー。このお酒美味しいー」
幸せだなぁ、なんて思いながらお猪口に口を付けていると、
「主ー、来てるんなら来てるって言ってよぉ」
後ろから清光が抱きついてきた。
「ごめん、来てたー」
うひひと笑うと、
「もー誰ー?こんな呑ませたのー。俺の知らない主がいるー」
清光が嘆く。
「せっかくこんな時間に来てくれたんだ。共に呑まない方が野暮だろう」
長曽祢が言ってくれるから、
「野暮だー」
勢いよく右腕を突き上げると、
「もー主呑みすぎ。大人しくして!」
上げた右腕を押さえつけて下ろした。
「主と呑んでると聞いたが、もうこんななのか?驚いた」
騒ぐ私たちに気付き、周りには広間にいた男士が続々と集まってきた。
鶴丸、大倶利伽羅、にっかりと山姥切、それに一期、大般若、三日月、石切丸と小狐丸までいる。
「これ以上増えたら収拾つかなくなっちゃうから部屋戻った他の奴らには主来てること黙っとこうね」
「了解」
私を押さえつけたまま清光が安定に言っていた。
「長曽祢さんおかわり」
「おぅ。呑め呑め」
また酒を注いでくれたが、
「清光呑めなーい」
清光が離してくれない。