第2章 ユメひとつ
その日の晩、もう一度本丸に向かえる時間が出来たので、パジャマ姿だったが行ってみることにした。
「こんばんわぁ」
カラカラと玄関を開けると、広間の方から賑やかな声。
今は夕食時なのだろうか。
静かに廊下を歩いて厨の方から入ろうと覗くと、予想通り光忠と堀川がいた。
「主さん!また来れたんですね」
「なんて格好で来たの?ひょっとしてそれが主の寝間着姿なの?」
夏場なのでロングの緩めのパンツに共布のキャミソール、更に共布のロングカーディガンを羽織っている。
「うん。向こうめちゃくちゃ暑いんだけど、こっち来たら結構涼しいね」
カーディガン着てきてよかったぁ、と呟く私に、
「向こうじゃ着てないの?」
「うん。暑いから。一応見苦しくないように着てきたの」
やはりぷよぷよ二の腕全開はまずいだろう。
「主ご飯は?」
「食べてきたけど…」
「けど?」
「食べたい」
せっかくタイミングが合ったんだ。チャンスは逃したくはない。
「オーケー。用意するよ。何人かはあっちで晩酌してるからそこで待ってて」
光忠に言われ、
「行きましょう」
堀川が手をとってくれた。
「兼さんとこらへんがいいかなぁ」
広間に入り和泉守や長曽祢のいる辺りへと引っ張っていく。
悩むふりをしながらも和泉守一択に決まってたよね、と突っ込みたくなってしまう。
「こんばんは」
近づいて声を掛けると、
「おー主じゃねーか。珍しいな、こんな時間に」
「一緒に呑むか?」
酔って少し赤い顔の和泉守と長曽祢が言ってくれた。
「じゃあ少し」
長曽祢のそばに座ると、その辺にあったお猪口に日本酒を注いでくれた。
「主と呑むのは初めてだな」
「そうですね」
お猪口を受け取り口をつける。
「あー美味しい」
「イケる口か?」
「好きですよ、お酒」
くっと飲み干した私に感心したような長曽祢。
「じゃあもっと呑め」
また注いでもらっていると、
「おんしら俺も混ぜちくれんか」
土佐の酒豪が乱入してきた。
「高知の呑み方はしませんよ?」
「えーがえーが。土佐のおなごも酒に強かったき、懐かしゅうなってしもうたがの」
豪快に笑う陸奥守。
そうしていると、
「主さん主さん」
小さい声で堀川が私を呼ぶ。
なんだろうと目線を向けると、和泉守が座ったまま寝ていた。