第2章 ユメひとつ
「そういうのは無しに…」
結局あの日以来何かと理由をつけては清光にキスを迫られている。
実際隙を突かれたことも何度か。
「だって俺超がんばったんだよー!索敵も全部成功したし、完全勝利の連発だし!」
「うん。さっき聞いたよ」
散々先程の報告から聞かされている内容だ。
「もー、主のばか」
抱きしめるのをやめてくれたから素直に清光から離れると、
「フェイント…にみせかけて攻撃ぃ」
畳の上に組み敷かれ、跨がってきた清光に唇を塞がれる。
また隙を突かれ清光のキスを受け入れてしまった私に、嬉しそうに何度も口づけを繰り返してくる。
「…このまま抱いてい?」
「ダメ。ゼッタイ」
要望には応えられない。
既に清光のキスで疼き始めているけれど。
「主、目がとろんってしてて、俺を誘ってるように見えるよ?」
「誘ってないって」
「嘘つき」
言った清光の唇が私の首筋に触れた。
「き、よみつ…んっ、だめだってば」
部隊長おろすよ、と脅しを掛けると、首筋に口づけるのを止めて顔を上げた。
「…嫌いになる?」
一瞬で潤む瞳。
「だめだって言うのにしたら、なるかも」
「…わかった」
大きく頷くと私の背に腕を回した。
「ぎゅってしてるのはいい?」
「…暑くないんなら」
清光はまだ戦闘服だ。多分暑いはず。
「平気」
自分自身を落ち着かせるように強く抱きしめて何度も深呼吸をする。
その間に何度か嗚咽が混じった。
清光はやっぱり嫌われること、愛されなくなることを極端に怖がるみたいだ。
子どもを宥めるように私も清光の背に腕を回しトントンと叩いた。
「そういえば清光」
「…なぁに?」
「さっきね、三日月さんと石切さんから向こうの不在時間を短くしてもこっちに半日いられる方法もあるって聞いたんだけど…」
これを誰かに伝えたくて本丸内を歩き回ってたんだった。
「そうなの?」
がばっと顔を上げた清光にはやはり泣いた跡があった。
私はそれに気付かないふりをして、
「でもそうすると私の1日がめちゃくちゃ長くなっちゃうわけじゃない?さっき教えてもらったのでも単純計算でほぼ1日半になっちゃうんだよね」
「うん」
「まぁ仮眠をとるにしても怖いのが身体の老化のスピードが倍以上になるかもしれないってことでね」
「ん?」
首を傾げる清光。