第20章 Don't worry,don't worry
「もう平気?折れない?」
抱かれたまま見つめると、
「そうだね。約束しただろう?必ず戻ると。だからもう平気だよ」
その言葉に涙が込み上げてきて石切丸の着物にしがみついた。
石切丸が戻ったことに安心しきって気が抜けていたところに、
「ねぇ三日月、薬研はどうすんの?」
清光が聞いた。
「そうだなぁ。俺としては慧をとられるのはやはり嫌だが…」
「おい、じーさん」
薬研が三日月に文句を言おうとしたが、
「慧を泣かせたままでは薬研も後味が悪いだろう?」
「そうですね。慧さんは薬研殿が大人になったら結婚したいと言っていたくらいですし」
小狐丸が小さく溜め息をつく。
「は?慧?」
先日の結婚云々をここで蒸し返すか…。
「だってあの時の薬研カッコよかったんだもん」
あのときも、怪我をした私に対しても。
「慧の気持ちはまた聞いてやれないのだがな」
三日月が言った。
「…はい」
石切丸の腕のなかで頷いた私に、
「まじかよ」
「折れそう」
鶴丸と清光が嘆いた。
「え?は?どうなった?」
薬研は意味が判らないといった風に戸惑っている。
「お前もこっちの仲間入りだ」
大般若が言った。
「兄としては複雑ですが仕方ありませんね」
「みんなには秘密だよ?」
少し顔を歪めた一期と、人差し指を立てて口の前に当てながら言う光忠。
「あ…うん」
漸く状況が掴めてきたらしい薬研は、見る間に顔を赤くし、
「いざそうなると結構恥ずいな」
酒を呷って掌で顔を隠したが、
「まぁ薬研さんがいれば慧の身体が悲鳴を上げてもすぐに助けられるからいいんじゃないのかな」
にっかりが言うと、
「俺はそっち要員なのかよ!?」
薬研がツッコミをいれた。
「やはり折れなくて良かった。こんなに楽しい場所はそうそうないからね」
「そうだぞ。俺たちは折れるわけにはいかないのだ。だから慧を貸せ」
両手を開いて石切丸に言う三日月。
「どうして?断るよ」
言い返した石切丸に、
「三条サンらもご機嫌だな」
大般若が笑った。
「ほんとすげぇメンバー。加州だけなら勝てる気がしたけど俺自信なくすわ」
「は?俺は慧ちゃんの初期刀だよ?どうしたら勝てると思うわけ?」