第20章 Don't worry,don't worry
暫くそうやって総勢10人、酒と食事で盛り上がっていると、
「ここは天の岩戸なのかい?」
皮肉混じりの懐かしい声が聞こえてきた。
目線を上げると祈祷場の扉が開き石切丸が立っている。
「っっ石切、さん!!」
立ち上がろうとした私からにっかりが離れた。
「さぁ行きなよ」
私の感情がぶわっと高まったことに気づいたのだろう。そう言ってくれる。
その言葉に押されるように数歩進み、大きな身体に抱きついた。
「っと、慧さん」
「よかった。また逢えた!」
一気に涙腺が緩み目から涙が溢れ出す。
「ごめんなさい。ありがとう」
伝えたい言葉はたくさんあるのに、出てきたのはその二言だけで。
「よぉ、やっとお出ましか」
「待ちわびていたぞ」
皆が石切丸に声を掛ける。
「石切丸勝手なことしないでよね!?慧ちゃん心配しすぎて大変だったんだから!」
清光が文句を垂れ、
「その割にはあまりブレないようにかなり頑張ってたよなぁ」
大般若が言ってくれる。
「そうだったのかい?それは慧さんありがとう。偉かったね」
抱きついたままの私の頭を撫でながら石切丸が言った。
「肩はもう平気かい?」
「…すごぉく痛い」
籠った声で言うと、周りが焦る気配がする。
そりゃそうだ。みんなもう私の肩は平気だという体で毎日を過ごしていたんだから。
「嘘です。すっかり治りました」
顔を上げると、困ったような石切丸。
「痕は?」
「まぁ、それなりには…」
かなり大きな傷だったんだ。残らない方がおかしい。
「ならやはり私が責任をとってお嫁に貰わないとだねぇ」
私を抱き上げ膝の上に横抱きにして座った。
「はぁ?石切丸何言ってんの?寝ぼけてるの?」
「責任云々でいくんなら僕になるよね?」
「いや俺だ」
清光を皮切りに光忠と三日月が言った。
「ダメだよ。だって慧さんには私の指輪が嵌めてあるじゃないか」
あれから一度も外していない指輪。願掛けのようなつもりだった。
「何それ!なら俺も慧ちゃんに指輪買うし!」
清光の目が緋みを増す。
「なら俺も贈ろう」
鶴丸も手を挙げる。
「そんなに着けたら邪魔…」
ぼそりと私が言うと、
「みんなどんだけ慧好きなんだよ」
薬研が笑った。