第20章 Don't worry,don't worry
石切丸が気になって、仕事を終えた後清光に祈祷場の前まで連れて行ってもらった。
「ここで待つの?今日出てくるか判らないよ?」
「うん。だけど…」
「じゃあ俺も一緒にいるね」
手を繋いで石切丸を待っていると、
「なんだ?面白いことをやっておるな」
戻っていた三日月と小狐丸、鶴丸もやってきた。
「慧、ハグさせてくれ」
私のそばに来て抱き締める鶴丸。そして、
「今日の気はなんか荒いな」
「ですね。感じたことのないような…」
小狐丸も不思議そうな顔をする。
「ごめん、俺間に合わなかった」
清光が言うと、
「そうか」
三日月がそれだけ言い、鶴丸と小狐丸が目を見開く。
どういうことだ?と私を見つめてくる鶴丸に戸惑っていると、
「ちょっと、なんでご飯食べに来ないの!?」
大皿に盛った食事を持って光忠と一期が現れた。その後ろには酒を持った大般若。
「お前らも遠征行ってたよな?」
「はい。夕方戻りました」
鶴丸の質問に一期が大成功でしたと笑顔で答える。
その場の顔触れをひとりずつ確認しながらも鶴丸と小狐丸は腑に落ちない表情。
そこへ、
「石切丸さんはまだ戻らないのかい?」
戦闘服を着たままのにっかりが姿を見せた。
「違うな」
「そうですね」
言う鶴丸たちに、
「何がだい?」
笑顔のにっかり。
しれっと私の後ろに回り込んで抱きついてきた。そして、
「ここに居る男士じゃない気を慧から感じるね。…そうだね君に近いかな」
言いながら一期を指差した。
「私、ですかな?」
「そう。君の弟くんだね、きっと」
言いながらその指で皿のおかずをつまみ、口に運んだ。
「ここは大丈夫かい?」
私の胸元をトントンと叩いて聞いてくる。
「…今は石切さんの方が気になるので私の心はどうでもいいです」
一期の方を見れずにそう言うと、
「まさか…」
鶴丸が声を上げ掛けたが、
「まぁその辺にしといたらどうだ?」
大般若が酒を注ぎ分けて差し出した。お猪口を受け取り鶴丸が口をつけたのに合わせ、
「…今日俺が間に合わなくて」
「私もこんなことになるとは思わなくて出陣計画を立てるのを失敗しました。一期さんごめんなさい」
清光と私が謝罪すると、
「嘘だろ?」
鶴丸は飲み干したお猪口をコツンと床に置いた。