第20章 Don't worry,don't worry
「あ、ぁ…」
薬研の目に映る私はどんななんだろう。
目隠しをされているから何も判らない。
少し怖い。
それでも媚薬のせいか付喪神に求められたせいか、快楽の沼に落とされた私は逃げることもできずにいて、
「好きだ」
ぼそりと耳元で囁いた薬研の声に反応し、薬研を素直に受け入れた。
「ぁっ…んっ」
細い身体が私を抱き締めて、それでも力強く往復してくる。
どうしていいか判らず、ただ与えられる快楽を感じた。
一期に知られたら討たれるかな。
大事な弟くんにこんな汚れ仕事させて。
「んっ」
「慧?」
ぼんやりした思考で私の反応が変わったことに気づいたのか薬研が私の名を呼ぶ。
「っ、薬研?」
「加州だ」
「ねぇ、私一期さんにお覚悟されちゃうかな」
真っ暗な視界。まだ指一本分くらい溺れていない理性を集めて薬研に聞いた。
「なんで」
身体を起こして体位を変え、ゆっくり攻めながら言う。
「だって大事な弟くんに…」
「俺はむしろよくやったと褒めて貰えると思うけどな」
言い切り薬研のスピードが上がる。
「あ、やっ!」
「どうだ?気持ちよくなってきたか?」
「んっ、や、気持ち、ぃ…」
お腹のなかがきゅんきゅん締まる。
そんな私の胸を薬研の両手が掴み乳首を指でつまんだ。
「んっっ、やげっ」
「慧っ」
もうダメだ。
最後指一本分の理性も沈んだ。
薬研に与えられる快楽を、まっすぐに感じて何度も絶頂を迎え、薬研も私のなかで放った。
脱がされた着物の下は畳。そんな固い場所で薬研に抱かれ何も見えない状態で。
私の身体を抱き締め、口づけ、着物の前を合わせた。
そうして外された目を覆っていたネクタイ。
開けた視界に映る薬研の表情は何か複雑そうで。
「慧すまない」
謝罪をしてきたから首を横に振った。
「私こそごめんなさい。ありがとう」
お陰でまだここに居られる。
石切丸が戻るまでは何としてもここにいなくちゃならない。
身体を起こして膝を崩し座る私に、
「泣かせちまうようじゃ俺もまだまだだな」
手を伸ばして流れた涙を拭ってくれた。
時計を見ると正午を少し過ぎていて、清光を待っていたら間に合わなかったと教えてくれているようだった。
間違ってるのに間違っていない行為。矛盾しかない。